民泊届出・風俗営業許可と選挙の関係とは?
投票行動が許可結果を左右する
こんにちは、東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。
新しい元号が発表され平成も残すところあと半月となりました。新しい時代への社会の行く末を占う統一地方選挙の後半戦も本日4月14日からスタートしました。
もっとも、一般の社会生活を送るうえで地方政治などほとんど興味ないという方も少なくないと思います。
ただ、風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業や宿泊業に携わる方々には是非とも地方政治に関心をもっていただき、投票を行って頂きたいと思っています。というのは、地方政治、より厳密に言うと地方議会・地方行政と許認可・届出は非常に密接な関係を有しているからです。
もっと分かりやすく言ってしまえば、地方議会・地方行政との接点を多く持っていると事業運営上有利だからです。
今回は実際の民泊事例を例に地方議会・地方行政と許認可の関係を考えたいと思います。
地域の独自規制が強すぎた民泊
2018年3月から解禁された住宅宿泊事業(民泊事業)の届出ですが、この1年間での受理件数は1万3千件を超え、宿泊利用者数も200万人となりました。もっとも、制度スタート当初からこのように活況だった訳ではありません。住民や住環境に配慮した自治体が厳しい規制を行っていたからです。
やたべ行政書士事務所が所在する新宿区も例外ではありません。
新宿区は基礎自治体として全国でも最も早い段階で民泊条例を制定し、地域の特性を反映した独自規制を示しました。当初から「違法民泊撲滅」を訴え、民泊届出時には住宅への立ち入り調査も行うという非常に厳格なルールを設けています。
これは歌舞伎町や大久保といった外国人観光客に人気のエリアがあることから、住環境が乱されるのではないかといったことを懸念する地域住民に配慮したことがあります。実際、昨年2018年の行政主催の地域集会での住民の声は「民泊適正化」に関するものが殆どでした。
議会としての新宿区議会、行政としての新宿区は「地域住民の声を反映させる」という大義のため、民泊制度に対して極めて厳しい姿勢を取りました。
議会・行政(首長)ともに究極的には「選挙」で選ばれます。有権者である地域住民の声が最優先になることはある意味当然でしょう。一方で、民泊事業を行おうとして届出が思うように受理されない事業者は悲鳴を上げていました。特に厳しかった2018年前半は、新宿区の民泊届出窓口で怒声が響くことも少なくありませんでした。
実は、この現状に窮していたのは事業者だけではなく、許可・届出の専門家である我々、行政書士も同じでした。
やたべ事務所では制度開始日の2018年3月15日に周到に用意していた十数件の申請受理を仲間と手分けして実現しましたが、準備が十分でない状態では間違いなく出鼻を挫かれていたと思います。
シェアリングエコノミーの本丸として話題となった「民泊」は許認可実績があまりない行政書士も含め、多くの方が専門として打ち出していきました。住宅宿泊事業法の解説セミナーなどで名を馳せた行政書士であっても、独自規制の厳しい地方自治体での民泊申請はほとほと苦労していたようです。
地域調査・図面・保健所・消防署など多くの面で風俗営業許可と共通する民泊ですが、風俗営業許可以上に難しいと言えたとも思います。なぜなら、法律には記載されていない条例での独自規制、さらには管轄消防署レベルでの独自ルールなど、地域行政の裁量による独自規制がどんどん広がっていったからです。
特に歌舞伎町を管轄する大久保出張所の消防署は有名でした。
民泊届出申請を行うには適合通知書を取得する必要がありますが、まず消防署に連絡してもアポイントを受け付けようとしない始末です。これは違法民泊を行っていた事業者だけでなく、まっとうな事業者も、行政書士も皆同じでした。特に行政書士などは、風俗営業許可案件などで日頃から消防署とも面識がありますが、「民泊案件」というだけで閉店ガラガラです。取りつく島もありませんでした。
それもそのはず、大久保出張所が管轄する歌舞伎町での民泊物件といえば、暴力団事務所が入っているマンションや違法建築物件など、きな臭い物件ばかりです。行政として歌舞伎町では民泊をやらせたくなかったというのが本音だったと思います。消防署もかかる価値判断のもと、届出させない方向でわざと非協力的な対応を行っていたように感じました。
また、そのような対応を取ったところで、有権者である住民からはクレームは殆ど来ません。民泊なんかを推進しても支持されるのは非有権者からであり、訳の分からない連中が住環境に入り込んでくることで有権者である地域住民からはひんしゅくを買うからです。
このような傾向は新宿区だけに限らず全国で確認され、観光庁によって「過剰な手続きを求める自治体」の公表という事態にまでなりました。
届出許可と選挙の関係
では、このような行政が一方向に走り過ぎているときはどのような対応を行うことが良いのでしょうか?
私は「選挙」すなわち「民主主義の機能を活かすこと」が良いと考えています。といっても、決して建前的な綺麗ごとを言うつもりはありません。
贈収賄事件などで話題になる「陳情」というものがあります。あれは金銭の授受を伴っているから問題なのであり、政治家に対して地域の社会問題解決を相談することは何も問題がありません。というよりも、そのような問題解決を行わなければならないのが政治家なのです。
独自規制で事業者の権利が不当に抑圧されているときはしっかりと訴えるべきです。ただし、訴え方は効果のあることをやらなければなりません。素人であれば仕方ありませんが、専門家である行政書士なのに感情的になって役所窓口で喧嘩している方もいらっしゃいます。そんな対応で結論がひっくり返ることはまずありません。それよりも相手の論理で考え、相手の勘所をつくことです。
議会・行政はあくまで民主的基盤の上で成り立っている以上、「選挙」というのは絶対に外せません。もちろん、自分自身が有権者として一票を投ずるという意味でもそうですが、選挙区で商売を行っている事業者であればそれ以上に影響力を及ぼすことが出来ます。
性風俗など特殊な場合は除いて、選挙区に所在しているサービス業、特に飲食関係の事業者を地方議会議員は非常に重視します。その店舗に集う地域住民・有権者への影響力があるからです。これはSNS全盛の現代にフォロワーを多く有するインフルエンサーが企業から重宝がられるのと同じです。
地方議会のレベルでは、選挙区内への絶大なインフルエンサーは無下にしないと断言できます。前々元号となる昭和色の濃い古臭いスナックでも、そこに地域住民や町会・商工会メンバーが集っているとなれば最重要店舗となります。風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービスは地域住民がリラックスして本音をさらけ出す場所であるからこそ、政治家も「場」としての重要性を認識しています。
例えば、新宿区でいうとゴールデン街・思い出横丁などはその筆頭です。訪日観光客に人気のスポットだからというのもありますが、ここに集う風俗営業事業者に受け入れられた区議会議員というのは本当に強い存在になります。大手広告代理店出身の区長が唱える「ナイトタイムエコノミー」と異なり、本当に風俗営業の世界に住む事業者の視点でのあるべき施策が語られているのは、現場のお店なのです。
話を民泊に戻しますと、新宿区での厳しい独自規制に関しても地方議員・地方行政への勘所をついた攻略を行っていきました。消防署は新宿区ではなく、東京都管轄なので都議会議員からもアプローチすることも辞しません。
もちろん、これらのロビー活動を通じて、不適切な許認可・届出が認められるようなことはあってはなりません。ただ、不当・不条理な規制をされたのであれば、根拠を明確にして問い合わせすべきです。行政書士の中には行政書士法から何から法令を振り回して役所を批判する輩も居ますが、やたべ行政書士事務所のスタンスはあくまで依頼を受けたクライアントの許可・届出が認められるかの結論を重視します。
役所は自身が前例となるのを嫌がりますし、逆に他で前例があれば聞く耳を持ちます。また、自分の職責として決められたルールは粛々と実行しますが、然るべきラインから通達された変更には従います。
担当者で埒が明かなければ上司に直接交渉というのは民間でもあると思いますが、行政でもそれは同じです。ただ、その際現場担当者の面子を潰したり、逆恨みされてはその後の案件で不利益を被ってしまいます。相手の立場を尊重しながら攻略するには監督官庁や議会議員から働きかけるのはお役所には非常に効果があります。
そして、議員にとっての究極の監督官庁は有権者なのです。有権者の投票活動に影響力を及ぼす事業者として認識させること、これこそが最強の「関係」だと私は考えています。事実、これらの積み重ねから、新宿区での民泊受理・消防署対応も徐々に変化し、受理件数も大きく伸長していきました。
これからの一週間の選挙活動期間、この人はと思う候補者がいればコンタクトを図ってみるのも一考です。言うまでもなく、政治家と仲良くなり信頼関係を築くなら選挙の時です。政治家は選挙の恩義は絶対に忘れません。困った時に直ぐに陳情できる道筋をつけるためにも、是非、地方選挙に興味をもち、投票に行ってください。それでは!
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