風営紳士録2.0

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違法行為である賭博?パチンコは違法なのか

違法行為である賭博

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

ひろゆきさんがパチンコ業界に関してツイートされていました。

パチンコは「違法行為である賭博」なので、業界として消滅すべきとされています。

我ら行政書士は風営法第2条四号に基づいて「ぱちんこ」営業の許可申請を手掛けています。

もし、パチンコが「違法行為である賭博」なら、行政書士は違法行為の助長をしていることになります。

それどころか、風営法(正式には風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)自体が、違法行為の営業を認めていることになります。

 

 

アベマTVの討論番組

 

ABEMAでは、一昨年末に本テーマに関して興味深い討論番組を行っていました。

番組内で麻雀プロでもある津田弁護士は「(パチンコは)違法とは言えないというのが私の考え」と控えめに答えていました。

賭博罪に精通した法律実務家なら「パチンコは合法です!」と断言できないのかと驚きませんか?

法律実務家というのは、条文と判例に基づいて判断します。

実は、パチンコの合法性に関する判例は存在せず、実際に裁判でどのような判断がなされるか分からない以上、明言を避けたのだと思います。

 

 

グレーゾーンを巡って

 

こうしたグレーゾーンを巡る議論はパチンコに限らず、「夜の街」風俗営業での許可なしの接待行為や本番行為でも問題になります。

私が行政書士として大切にしているのは、実際に摘発取り締まりされているかどうかです。

行政法規として最も馴染みのある道路交通法でも、速度 1キロでも超過すれば厳密には違法です。

ただ、実際の取り締まりは、一定程度の速度超過でなければ摘発されません。

「ぱちんこ」営業に至っては、風営法許可の範囲で営業した事業者を「賭博罪」(刑法185条)として摘発した事案はこれまで一件もありません。

もっとも、これは風俗営業許可を受けている場合であって、風俗営業許可を受けていないパチンコや接待行為、風営無届での本番行為は摘発されます。

改めて、ひろゆきさんの主張をみると、「違法行為である賭博」とはこうした実際の運用ではなく、法理論上の正しさを求めているのだと思われます。

この点、日本の司法権がパチンコを「違法行為である賭博」と判断した事例はありません。

行政権がパチンコを賭博罪で起訴しない以上、司法手続きの場で裁判所が判断する機会もないからです。

また、そもそも賭博罪での摘発取り締まりを行っていない警察行政が、現状のパチンコ営業を「違法行為である賭博」とは考えていないのも当然です。

 

 

パチンコへの政府答弁

 

「パチンコは合法」と主張する論者が金科玉条の如く根拠にしているのが、コチラの政府答弁です。

 

(パチンコは)「風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しない」風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する質問に対する答弁書(平成28年11月18日)

 

以上のように答弁がなされました。

もっとも、これは法律の執行機関である行政権の答弁であり、司法権である裁判所の解釈ではありません。

従って、賭博罪成立の法律解釈には立ち入らずに「185条の罪に該当しない」とだけ説明し、賭博罪の構成要件該当性がないのか、違法性が阻却されるのか、といった理由は示されていません。

また、パチンコで刑法185条の賭博罪が成立しない根拠として、パチンコの景品交換は185条但書「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」に該当するからといった法律構成も示されていません。

刑法185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

答弁内容に関しては、質問者本人である緒方林太郎議員自身が詳細にコチラのブログで解説してくれています。

緒方議員のブログによれば、政府資料にはないフォローアップにおいて【「賭博でないぱちんこ」もあれば、「賭博だけども、『一時の娯楽に供する物を駆けたにとどまる』ぱちんこ」も存在しているという事を示唆】(原文ママ)とのやり取りがなされたそうです。

緒方議員の質問では、パチンコの賭博罪を否定する法律構成を三つに場合分けして質問していたので、こうした回答を引き出せたのだと思います。

あくまで緒方議員がフォローアップし、解説したことで行政側の考え方が明らかになった次第です。

緒方議員自身が「驚き」と説明している通り、政府から公開されている答弁書からは、このような基準は直接的には読み取れません。

この政府答弁内容を、より分かりやすくYouTubeなどで情報発信しているのを目にしますが、このやりとり部分を根拠にしていることを説明しないと余計に混乱を招く可能性があります。

少なくとも、法律素人の日常会話では「賭博」とは違法性を含む行為である意味合いで使われますから、「パチンコは賭博だけど合法」などと説明しても理解されづらいように思います。

 

 

三店方式への評価が要

 

本来であれば、パチンコの景品交換が「一時の娯楽に供する物」だから合法となるといった重要な法律構成をフォローアップの場だけで説明し、一般国民に明示しないというのは罪刑法定主義(憲法31条)の見地からは望ましくありません。

日本国憲法31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

もちろん、現在のところ行政としてパチンコを「違法行為である賭博」として取り締まっていないので、罪刑法定主義にも反していませんが。

ただ、実はこの点こそがひろゆきさんが指摘した「違法行為である賭博」になり得るポイントであり、政府としては痛いところを突かれないようボカしているとも感じます。

三店方式と呼ばれる景品の換金システムを一体的に捉えれば、「一時の娯楽に供する物」にとどまらず、実質的に金銭を交換する「違法行為である賭博」と評価できるからです。

繰り返しになりますが、政府答弁というのは司法権の法解釈ではないので、有権解釈としての権威性以上の意味を認めることはできません。

パチンコで認められた三店方式を流用させ、NFTなどの新たなテクノロジー分野で「違法行為である賭博」が横行すれば、パチンコ以外では現在の政府答弁と異なる評価が下される可能性もあります。

 

 

専門家に必要な傾聴力

 

パチンコの営業の自由も日本国憲法で経済的自由として保障されていますが、憲法22条・29条など諸説あります。

最高裁判例及び通説をもって正式な法解釈としますが、少なくとも法律の執行機関である政府解釈だけでは三店方式も含めたパチンコの合法性の最終的法解釈と断定することはできません。

その意味では、ひろゆきさんの指摘は三権分立での行政権に対してではなく、司法権や立法権にこそ向けられるべき指摘なのでしょう。

特に法規範性を有する立法を司る国会・議会にこそ、真正面から取り組んで貰いたい問題です。

ひろゆきさんはじめ、過激な発言で物議をかもすインフルエンサーは少なくありませんが、世論の共感を集めるものは社会の本質的問題点を突いているケースが少なくありません。

「警察利権によってお目溢し」なのかは分かりませんが、利用者の殆どが換金する前提で楽しんでいるパチンコでは、三店方式を一体的に捉えない方が不自然だと思います。

一般の方が法令の細かい知識や政府答弁など知らないのは当然で、専門知識の欠如をあげつらって「間違い」「正しい」だのとマウントを取ることが専門家に求められる役割ではありません。

現行制度への理解不足を加味した上で、なお社会の本質的問題や世論の共感を得るような問題提議がなされた際は、専門家として傾聴できる度量を持ち合わせていきたいものです。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

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