風営紳士録2.0

ナイトタイムエコノミーから警察の取締りや法令改正情報まで、風俗営業の最新情報を発信中です!

寅年の風俗営業産業にタイガーは微笑むか?

寅年に象徴されるもの

 

皆さん、明けましておめでとうございます。

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

新たな年が始まりましたね。

今年2022年(令和4年)は寅年、日本では「虎は千里を走る」との言い伝えが有名ですが、中国伝来の十二支で寅年は「春が来て草木が生ずる状態を表している」を象徴するそうです。

コロナ禍に苦しめられた経済状況が好転し、再び成長が始まることを意味しているのであれば何よりですね。

日本にも寅、タイガーが象徴的に描かれた作品が存在します。

2009年に出版された村上春樹の『1Q84』という小説をご存知でしょうか。

三部作に及ぶ長編ですが、読み応えがあり、お正月休みなどのまとまった時間のある時にはお勧めですよ。

ジョージ・オーウェルの『1984年』をオマージュした作品タイトルから分かるSF小説の類ですが、扱われているテーマは狂信的な新興宗教や洗脳、家庭内DV、薬物中毒者が見るような幻覚や妄想、目標達成に向けられた人間の狂気など、人間社会の病理を幅広く描いています。

小説の冒頭、時空の歪みから主人公がパラレルワールドに移動してしまう際、象徴としてタイガーが描かれています。

西暦「1984年」の世界から、もうひとつの「1Q84」のパラレルワールドへの入り口となるのがエッソ石油の看板が掲げられている箇所にある高速道路の非常階段とされています。

「ひょっとしたらここはもうひとつの違う場所ではあるまいか。私たちはひとつの異なった世界からもうひとつ更に異なった、第三の世界に移動しただけではないのか。タイガーが右側ではなく左側の横顔をにこやかにこちらに向けている世界に。そしてそこでは新しい謎と新しいルールが、私たちを待ち受けているのではないのか?」『1Q84』村上春樹より引用

 

「新しい謎と新しいルールが、私たちを待ち受けている」という意味では、2019年から突入したコロナ禍の我々の世界ももうひとつのパラレルワールドなのかも知れません。

 

 

風俗営業での種の起源

 

さて、風俗営業の世界に焦点を当てて昨年2021年を振り返ってみると、やはりコロナ禍による影響によって生み出されたパラレルワールドの歪みが目立ったように感じます。

その一つがコンカフェ(コンセプトカフェ)と呼ばれるメイドカフェ業態での風営法違反による取り締まり強化です。

参考【メイドカフェに風俗営業許可は必要か?】

秋葉原での規制が強化されたことから弊所やたべ行政書士事務所へのメイドカフェ・コンカフェ関連のご相談も増えました。

千代田区長交代による行政方針の変更などもありましたが、最大の要因はやはりコロナ禍による接待飲食業態への自粛要請などの環境変化がコンカフェ業態での特需をもたらし、結果として規制強化に繋がったからと言えるのではないでしょうか。

同様にコロナ禍による環境変化で特需がもたらされたのがメンズエステ業態です。

デリヘルのような粘膜接触を伴わないサービスであることが、サービスを行う側・受ける側双方のニーズに合致しただけでなく、どこまで所定外の接触サービスを享受できるかという駆け引き要素が高付加価値化・高収益化させやすいビジネスモデルへと昇華されました。

ただし、こちらのメンズエステ業態も特需で流行っている分、現在は規制・摘発が強化される傾向にあります。

こうして見ると、時代による環境変化がまず起こり、それに適応するためサービス事業者側も変化することで需要を生み出し、そうした変化を後追いする形で行政による規制強化がなされていく流れであることは共通しています。

実はこれこそが風俗営業に限らず、全産業で繰り広げられてきた産業成長と行政規制の行動原理であり、ダーウィンの「変化できるものが生き残る」という種の起源にも通ずる普遍的進化過程なのです。

 

 

タイガーを貴方の車に

 

『1Q84』が発表された2009年前後はクラブブームが盛り上がりを見せ、「夜の街」では朝までの宴が繰り広げられていた時代でもありました。

ドラッグによるトリップ状態と親和性がある音楽ジャンルとしてサイケデリックトランスやEDMなどが流行り、六本木・渋谷・新宿では暴走族やカラーギャング出身の事業家によるクラブが長蛇の列をなす大盛況となっていました。

昨年、2021年にブームとなったアウトロー系YouTuberの現役時代の武勇伝が繰り広げられたのもこの頃です。

この時代は旧風営法下なのでクラブの深夜営業は認められておらず、営業自体が違法だったこともあり、クラブ営業は法の目を掻い潜る闇営業化し、完全にパラレルワールドに陥っていました。

こうした乱闘や薬物使用が発生しても、時間外の違法営業発覚を恐れて店舗から警察に通報されることが無く、あくまでセキュリティスタッフによる自己防衛に委ねられていたケースが少なくありませんでした。

この時代、クラブカルチャーの負の側面には一切目を閉ざし、「ダンスは文化だ」「小箱カルチャーを潰すな」などと理想を語るだけで、風営法をガン無視したアドバイスをしている専門家もおりました。

こうした専門家のアドバイスを真に受けて、パラレルワールドの闇に転落し、二度と帰って来れなくなった関係者もいます。

 

ちょうどこの頃、前田日明さんが立ち上げた地下格闘技イベントであるTHE OUTSIDERが開始され、ストリートファイト出身の格闘家が多く生まれました。

彼ら格闘家の中には、下積み時代にクラブのセキュリティスタッフの稼ぎで糊口を凌いでいた方が少なくありません。

初期の頃のTHE OUTSIDER開催会場であったディファ有明は、サイケデリックトランスのイベント会場としても有名だったことにはこうした背景もあったのかも知れませんね。

その後、大阪での傷害致死事件や東京での暴走族による抗争・殺人事件が発生したのを境に、風営法による摘発・規制強化が進み、クラブブームは下火となります。

同時に、有識者からの問題提議から風営法改正の機運も高まり、2016年の特定遊興飲食店営業新設に繋がっていきました。

ここでも、時代の変化に適応して生み出される需給とそれに対する規制、そして更にその規制を超える時代の変化といった普遍的進化過程が繰り広げられてきているのです。

この風俗営業の進化過程を現実世界とパラレルワールドとの行き来を繰り返す『1Q84』の世界になぞらえて考えてみます。

時代の波に乗り拡大する需要と供給と、その反動からのパラレルワールドに陥るかのような規制強化。

パラレルワールド(逮捕・勾留・行政処分)に陥らない、あるいは陥りそうになっても、現実世界にしっかりと戻れるようタイガーの微笑みを見落とさないことが大切です。

「タイガーをあなたの車に、とエッソの虎は言う。彼は左側の横顔をこちらに向けている。でもどちら側でもいい。その大きな微笑みは自然で温かく、そしてまっすぐ青豆に向けられている。今はその微笑みを信じよう。それが大事なことだ。彼女は同じように微笑む。とても自然に、優しく。」『1Q84』村上春樹より引用

 

 

仮想と現実との狭間で

 

『1Q84』ではパラレルワールドと現実世界を繋ぐ通路は高速道路の非常階段でしたが、新年に切り替わるカウントダウンの瞬間は2つの年、2つの世界の切り替わりを象徴しているので同じ通路の役割を果たしています。

現実世界の法定通貨に対する概念としての仮想通貨・暗号資産はこの年末、カウントダウンに向けて一斉に暴落し、その後急回復していました。

ビットコインへのアルゴリズムが発動したためか、日本時間でのカウントダウンに合わせて多くの仮想通貨が一斉に同じ動きを示していました。

かつて日本の仕手筋・相場師は、出来高の少ない低位株を買い集め、東京証券取引所の年初の大発会初日にストップ高をつけさせて提灯買いを集める手法を流行らせましたが、日本時間でのカウントダウンで一部の草コインに同じような急落急騰も確認されました。

世界のダークマネーの資金洗浄にも用いられている仮想通貨ですが、今やビットコインの時価総額及び流通数は法定通貨である露ルーブルより大きく、特定の仕手集団のみによって動かすことは困難な規模にもなっています。

その意味では、今回のカウントダウンでの仮想通貨の動きは一種の微笑みだったのかも知れません。

仮想通貨だけに、これもパラレルワールドから現実世界への橋渡しが起こるサインなのでしょうか。

 

 

『1Q84』から学ぶ

 

投資以外でも、この年末年始はパラレルワールドと現実世界の往来に類する事例を目にしました。

SNSの口コミ高評価の触れ込みで権威付けされたシェフが、コンビニのおにぎりを酷評したことからSNSで炎上し、低評価を下され、アカウント消去せざる得ない状況になっていました。

こうした状況に追い込まれたとしても、高級イタリアンで完全予約制の店なのだから根強い固定客がついているので痛くも痒くもないようにも思われます。

しかし、本当に職人気質のシェフであれば絶対にこのような番組には出演しないはずです。

お正月特番放送で視聴率も見込めるなら、何か尖ったコメントを言って宣伝効果を狙おうとの計算があったからこそ出演したと考えるのが自然です。

動画を見る限り、開発担当者に謝罪した上で料理の見た目の重要性を的確に指摘しているように感じますが、あそこまで口にしたくない仕草をする必要があったのかは疑問です。

そもそもコンビニ料理を試食する番組と分かって出演しているのだから、料理評価者として以前に尖った自分をアピールしたいパフォーマンスと受け止められてしまいました。

このシェフは自身のYouTubeチャンネルも開設して情報発信しているので、情報社会でのリテラシーは持っているでしょう。

バズりは成功してシェフとしての知名度は上がりましたが、同時にかなりのダメージを受けてしまったようです。

 

仮想空間であるインターネット上の口コミで社会的評価を権威づけて紹介されていたがゆえに、パラレルワールドへの扉を開いたのも同じくインターネット上の口コミだったということです。

風俗営業に関してもこのような議論が展開されていました。

パチンコを巡る三店方式による適法性の説明に関しては、少し知識を持っている方であれば既に結論が出て解決されている問題として片づけがちです。

その多くは先の炎上シェフと同様に、実際の店舗を知らず、料理も食べずに、インターネットで入手した情報でしかないので、国民や社会一般の感覚とはズレた結論になっていることが少なくありません。

そうした感覚のズレに気付かせる意味でも、こうして風俗営業に関するテーマで議論が活発になされることは、喜ばしいことだと思います。

投資でいえば取引出来高がないこと、事業でいえば関心を持たれないことが最も避けるべきことです。

私も含めて、業界関係者であれば規制強化・規制緩和のいずれにせよ、自分にとって都合の良い方向に誘導するようなポジショントークを展開しがちです。

ただ、現行法での現状の適法性説明を整合的に行うことにばかり囚われ、国民一般の感覚を無視してしまうと、これまたパラレルワールドの入り口に立ってしまうことになってしまいます。

風俗営業においては、国民や社会の共感を得る議論喚起こそがパラレルワールドから現実世界に戻る通路としての役割を担うことになると考えています。

今年は性風俗事業者の権利に関する憲法訴訟の結論も出ますし、東京都の営業自粛命令に対する行政訴訟も進展をみせると思います。

参考【性風俗の憲法訴訟で国から火の玉ストレート】

参考【風俗営業が「狙い撃ち」すべき手続的正義】

訴訟代理人としては司法での風穴を通すことが目標でしょうが、こうした問題は国民的議論が喚起されないと本質的解決には繋がらないと思います。

仮想と現実との狭間で迷子になったときこそ、国民や社会の共感が得られる方向にこそ解決のヒントがあるはずです。

最後に改めて『1Q84』から紹介させてください。

2022年がコロナ克服のアフターコロナ時代になるか、それとも第6波・7波襲来によるウィズコロナになるか分かりませんが、いずれにせよ示唆を与えてくれる内容です。

現在もオミクロン株の感染拡大が世界的に広がっていますが、寅年である本年は人類がコロナ禍のパラレルワールドから脱する象徴的な一年になると良いですね。

「私たちは論理が力を持たない危険な場所に足を踏み入れ、厳しい試練をくぐり抜けて互いを見つけ出し、そこを抜け出したのだ。辿り着いたところが旧来の世界であれ、更なる新しい世界であれ、何を怯えることがあるだろう。新たな試練がそこにあるのなら、もう一度乗り越えればいい。それだけのことだ。少なくとも私たちは孤独ではない。」『1Q84』村上春樹より引用

 

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA