風俗営業許可店に摘発・取締が行われる時
歌舞伎町の浄化作戦
東洋一の歓楽街、新宿・歌舞伎町を歩くと
必ず声をかけられたことがあると思います
「DVDは?」
・・・わいせつDVD販売の客引きです
インターネット全盛のこの世の中にあって
DVDパッケージの商売が良く成立するな、と
思われる方もいるかもしれません
ただ、ここは人間の欲望渦巻く歌舞伎町
もちろん普通にダウンロードできる
コンテンツを販売しているわけではありません
扱っているのはいわゆる裏物
もっとも昨年から今年にかけて歌舞伎町の
わいせつDVD販売店が一斉摘発されています
一回の捜査で押収された何十万枚もの
わいせつDVDが押収されることもありますが
いまだ客引きは減ることはありません
一時、マスコミをにぎわした
歌舞伎町のぼったくりバーや
全盛期に100を超えた裏DVD店も
現・吉住新宿区政のもとで
歌舞伎町の健全化も着実に進みました
今回はナイトタイムエコノミーの現場で
何が求められるかを考察してみました
浄化作戦のタイミング
繁華街での警察の取り締まりは
『警察密着24時』などの番組で
特集されることがよくあります
ナイトタイムエコノミーというと
一般の方はまずはこうした少し危うい
イメージを持たれる方も多いと思います
実際にナイトタイムエコノミーと呼ばれる
風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業では
許可制の営業がほとんどで
警察・消防・保健所といった行政の指導に
したがった運営が大前提となっています
ぼったくりバーなど
マスコミ報道で注目を集めた場合以外、
オリンピックなどのイベントや
大規模都市開発が行われるタイミングに
ナイトタイムエコノミーの都市環境への
チェックの目が入ります
一斉取り締まり
東京の繁華街(池袋、渋谷、新宿、六本木など)で
風俗営業店舗の取り締まりが開始されました
取り締まり開始当初、風俗営業、
特に性風俗を扱う業者は年末年始の恒例行事だと
高をくくり、多少の営業自粛をしていれば
「嵐は頭上を通り過ぎる」と考えていました
ところが1カ月たち、2カ月、3カ月が過ぎても
警察の取り締まりは終わるどころか、
ますます厳しさが増し、同業者の逮捕や
営業停止処分が続き、
性風俗営業者の間では悲鳴が上がりました
これは、その年の4月から施行された
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為など
の防止に関する条例の一部を改正する条例」
「性風俗営業などにかかわる不当な勧誘、
料金の取り立てなどの規制に関する条例の
一部を改正する条例」の序章だったのです
歌舞伎町をはじめとする東京の繁華街の浄化作戦を
石原東京都知事が率先してやったものなのです
浄化作戦に先立って、石原知事は、
環境浄化の責任者として
竹花豊氏を副知事に任命しました
竹花氏は、前広島県警本部長というキャリアであり
しかも警視庁では生活安全部長までつとめた、
いわば風俗営業を取り締まる大元締のトップで
この浄化作戦の成功いかんでは
警視総監まで昇りつめるのも夢ではないという
エリートだったのです
当時の取り締まり、
法改正の「本気度」は半端なものではなく
1年以上もの長きにわたる取り締まりの継続は
前例がありません
その結果確かに歌舞伎町の夜を闊歩するやくざや
ピンクチラシを持った客引き、
不良外国人の姿はめっきり減りました
怪しい人たちはかなり苦しいのが現実でしょう
しかし、その反面、テナントビルのオーナーや
周辺の飲食店、近隣のマンションやアパートの
所有者からも売り上げの減少や
空き室の増加に見舞われた悲鳴が上がりました
いつもそうなのですが
「街をきれいにしてください」と頼んだはずの
商店街が真っ先に音を上げてしまったのでは
当初の目的が吹き飛んでしまいます
どこまで頑張れるか……街をきれいにするには
ビルのオーナーや市民の我慢、負担、
そして、良識が必要になってきます
不条理に屈しない!
ある年の年末、キャバクラを経営する経営者が
警察に呼び出されて「その件で相談したい」と
電話がかかってきました
経営者はキャバクラの従業員の客引き行為で
警察署から「弁明通知書」なるものを渡され
どのように対処したらいいかという相談でした
「弁明通知書」には
「あなたに対する下記の事実を原因とする
不利益処分に係る
行政手続法第13条第1項第2号の規定による
弁明の機会の付与を下記のとおり行います」
と記載され、件名は「風適法違反」であり
予定される不利益処分の内容は
「指示処分」とのこと
警察署への出頭日時などが記載され
「弁明は口頭でも可能です」と
書かれてありました
経営者本人に従業員の客引き行為について
その時の状況を聞いてみました
――その店はテナントビルの3階にあり
従業員が客への宣伝のため
チラシ配りをしていた時のできごとです
チラシを配るのに際しては、
警察署交通課で「道路使用許可」ももらっており
強引な客引きをしたわけではないとのこと
それなのに、
なぜ従業員が客引き行為で逮捕されたのか?
その夜、店の案内チラシを持った従業員が近寄ってきた男性に
「いくらで飲めるの? 店はどこ?」と声をかけられ、
店へ案内すると、その男性は胸のポケットからおもむろに警察手帳を取り出し
「はい、風営法の客引き禁止違反」ということになってしまったそうです
あまりの理不尽さに経営者は「弁明書」を提出したいそうです
チラシ配りに当たって「道路使用許可」も取得し
「通行人の前に立ちふさがったり、付きまとったり、
身体に手をかけたりして客引きをしたつもりはありません」とのことです
それが事実であれば、経営者の憤慨も分からなくはありません
その時の状況や警察署員との間の雰囲気がどのようなものだったか
従業員から詳しく聞き「弁明書」を作成し、
経営者とともに指定の日時に警察署へ出頭しました
担当係官と話をしていると、大きな声が近付いてきました。
「どこの行政書士だ? 弁明書なんか持ってきたのは!」
警察署の生活安全課の前に伸びる廊下の突き当たり
そこは、衝立が立てられ、イスとテーブルが置かれ
簡単な取り調べ室といった感じ
「風営法違反」の「弁明書」を
経営者と一緒に提出しにいくと
顔見知りの刑事さんたちが3人集まり
「弁明書」に軽く目を通して
「ふむふむ。この通りなんだけど……
ちょっと待って」と言って「弁明書」を部屋の中へ
1分とたたないうちに
「どこの行政書士だっ? 弁明書なんか持ってきたの!」
ものすごい剣幕で飛び出してきたのは……
後で分かったのですが、このこわもての人物は、
新任の課長さんだったのです
「まあ、まあ、まあ」とベテランの刑事さんが
その場を仕切ってくれて……
(まるでテレビドラマのようでした)
その後、20~30 分待たされ、
受け取った書類は「指示書」
その指示書には、指示の理由と指示事項、
そして履行期限が書かれ、
不服申し立てのできる旨も記載されていました
「お前のところなんか、
ろくでもない店のくせして!
いつでもツブしてやるぞ!」と言わんばかりの
剣幕を目の当たりにすると、
たいがいの人は「不服申し立て」などできません
経営者が行政書士に全ての事実を話さないという
事情もあって、毎日毎日「ろくでもない輩」が
ひっきりなしにやってくれば、
課長さんの堪忍袋の緒も切れるのでしょう
生活安全課では、風俗営業や古物、銃刀などの
許可や届け出を毎日受け付けています
そして、風俗営業の違反を取り締まっているのも
同じ生活安全課です
自分の課で許可を受け付け、
その端から取り締まりをしないとならないという
自己矛盾があります
そんなことが続けば、
「ろくでもないヤツの申請なんか受付るな!」
「怪しいヤツの申請なんか蹴飛ばせ!」と
強面の課長さんでなくても言いたくなるでしょう
でも「怪しいから」「時間外をやりそうだから」
「賭博に走りそうだから」「卑猥になりそうだから」
「年少者を使用するんじゃないか?」
「不法就労の外国人を雇用するのでは?」という
懸念だけで許可の受け付けを規制してしまったら
無許可、アンダーグラウンドの世界が広がり
「風俗営業の適正化を図る」という
『風営法』の趣旨から外れてしまいます
このように、風俗営業の取り締まりは
とても厄介なものですが、
理不尽なことには決して屈する必要はありません
不条理や違法行為は必ず誰かが見ています
All Eyes on you!
やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!
それでは、また!
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