風営紳士録2.0

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穢れた夜の街の風俗営業に「特別な夏」到来

夜の街アウトブレイク

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

連日猛暑が続いておりますが、体調など崩されずにしておりますでしょうか。

ありがたいことに弊所・やたべ行政書士事務所には、この夏もご依頼をひっきりなしに頂いており、猛暑の中を関東近県走り回っております。

さて、そんな中で少し気になるニュースがあったので、またこちらでご紹介したいと思います。

既にマスコミの報道で目にされた方も少なくないと思いますが、8/14に新宿・歌舞伎町のホストクラブに家宅捜索が行われました。

今回の捜索は、ホストが未成年の女性に対し暴行などに加え、店舗で75万円の代金支払いに対する念書を書かせたなどの恐喝の疑いでの証拠押収が目的です。

従って、これまで本ブログで紹介したような風営法に基づく立ち入り調査といった行政警察活動ではなく、犯罪に対する司法警察活動です。

なお、行政警察活動司法警察活動の違いについてはこちらの記事をご参考にしてください。

事件の全容が明らかになっていないので断定することは出来ませんが、18歳の未成年相手に念書を取るという、今時、三流アウトローコミックでもありえないような法律知識レベルの犯行なので、店舗側が関与している組織ぐるみでの犯行ではないと思いますが、どうなんでしょうか。

ただ、業界では有名なホストクラブグループでの事件であることから代表者もメッセージを発信されていました。

この代表者の方は「協力をさせて頂きました」と言及されていますが、家宅捜索が行われるということは既に令状を取っており、裁判官が捜索差押を許可しているということになります。

この場合に拒否して協力しなければ公務執行妨害で逮捕されることにもなりますので、万が一同じように家宅捜索を受けた事業者の方はくれぐれも誤解ないように対応してください。

また、被害者への暴行が店外であったとしても関係先として店舗が家宅捜索されている以上、警察として店舗の経営実態を把握する必要から家宅捜索を行っている訳です。

75万円の代金請求事実の有無や未成年者が客として利用したことなど、ホストクラブとしての経営実態が細かく調べられ、当然ながら風営法的にも問題が生じることになると思います。

ネットに出回っている情報では未成年相手には25万円のミネラルウォーターを提供していたようですが、もちろんこれもメニュー表に表示していなければなりません。

せっかく新宿区とホストクラブ業界が連帯する良い機運が醸成されてきた中で本当に残念ですね。

ホスト業界をはじめとした夜の街・歌舞伎町の風俗営業に対する世間の風当たりが一層厳しくなりそうです。

 

 

パフォーマンスポリス

 

ところで、今回の事件が話題を集めたのはその内容よりも、家宅捜索をする際の警察の格好でした。

映画『アウトブレイク』さながらに防護服を身にまとった警視庁の職員が列をなして店舗入居ビルに入っていきます。

家宅捜索のその瞬間をNHKがベストショットで押さえていましたから、画的にもインパクトある形で映えました。

はっきり言って、現在のご時世では、行政として「夜の街への取締り強化を行っています」という分かりやすいメッセージを発するのには最高のショットだったと思います。

東京都による「東京アラート」「感染拡大特別警報」「特別な夏」など一連のキャッチフレーズは、マスコミ出身である小池都知事ならではの世論対策なのだろうな、と誰もが感じていたと思います。

とはいえ、現行の特措法の限界から個別の店舗に対して強制力を伴った対応ができないことに苛立ちを感じていたのは東京都に限らず、全国の知事も同様でしょう。

風営法をはじめとした関係法令でコロナ対策としての取締りを行うことが主張されていましたが、法目的が異なる以上、正面切ってはやりづらかったと思います。

その様な中での今回の事件は、夜の街への取締り強化をアピールしたいと考える立場からは、待ってましたとばかりの渡りに船状態だったのではないかと思います。

まだ、コロナウイルスの全容が明らかになっていなかった感染初期のダイヤモンドプリンセス号さながらに防護服で重装備した警察の姿は、夜の街への取締り強化の象徴としても写ったはずです。

「ホストクラブに立ち入る際は、この位に重装備しなければ危険」

そんなメッセージをニュース画像から読み取った人は少なくないでしょう。

ご丁寧にニュース動画では証拠を押収するための段ボールや防護服の背中に大きく「警視庁」の三文字が記載されているのがはっきりと分かるように報道されていました。

 

 

8年前の「特別な夏」

 

実はこうしたパフォーマンス的な捜索は風俗営業の世界では度々行われてきました。

もっとも象徴的だったのは2012年9月の六本木クラブFLOWER襲撃事件の時です。

この事件自体は、暴走族・半グレ集団の抗争によって一般人が殺害された刑事事件でしたが、同年4月に発生した大阪クラブNOONでの風営法違反事件をきっかけにした風営法改正運動に冷や水をかける事件にもなりました。

後に2016年の風営法改正を迎える伏線となる2012年のNOONでの風営法違反事件は最高裁まで争われ「なぜクラブでダンスしてはいけないのか?」という根源的な問いかけから法改正まで実を結びました。

この法改正の取り組み自体は素晴らしいものでしたが、一方でダンスクラブの実態として風営法の法目的とされている「善良の風俗と清浄な風俗環境」「少年の健全な育成」といった見地からは改善すべき悪しき経営実態があったのも偽ざる事実です。

法改正論者の中には、そのような部分に一切触れないで、クラブの文化的価値ばかりを強調される方もいらっしゃいました。

もちろん、法改正に持ち込むためのポジショントークとしては理解できますが、そんなクラブカルチャー振興の機運に冷や水をぶっかけたのが六本木FLOWER襲撃事件でした。

半グレ同士の抗争に巻き込まれて一般人が殺害される殺人事件であったことに加え、店内に客が複数いる営業中での凶行であり、犯行グループは凶器を携行してセキュリティに遮られることなく堂々と入退店できたことから、店舗スタッフ側の関与も指摘されたため、反社会勢力が入り込む危険性のビジネス業態として風営法の規制の必要性が見直された契機にもなりました。

いや、やっぱクラブって怖い所なんじゃないですか?

こんな世論に応えるかのように、その後六本木の大箱クラブを中心に続々と風営法違反の摘発が行われました。

パフォーマンス的に大々的に取締りを行い、見せしめとすることで防犯目的にしていたことは明らかです。

大阪NOONでも店外での傷害致死が絡んでいましたが、パフォーマンス的に取締りを受けていた店舗(特に大型店舗)は風営法違反以外にも薬物犯罪や脱税など何かしら風営法以外での問題を抱えている事案が殆どでした。

 

 

穢れなき政治を目指し

 

なお、この風営法改正時に与党議員として前面に立って業界団体からのロビー活動を受けていたのが秋元司被告です。

現在、保釈中の秋元被告コロナ禍でのナイトタイムエコノミー関連の業界団体の会合などへも出席していますが、業界関係者の中で秋元被告の情報を発信したがる人はめっきり減りました。

それはそうでしょう、現在も支援者による偽証依頼が報道されているくらいですからナイトタイムエコノミー業界としてもこれ以上関りを持ちたくないというのが本音ではないでしょうか。

法改正前は夜の街、特に一部のクラブ業界関係者が「秋元先生、秋元先生」とこぞってSNSなどにあげていました。

何を隠そう、行政書士会も秋元司被告を迎えて大々的に政治セミナーを開催してましたが。

秋元被告は保釈された最初の会見で真っ先に「ナイトタイムエコノミーに尽力したきた」ことをアピールしていました。

収賄罪に関して無罪を主張しているとのことですので、公判を通じて是非、身の潔白、まさに穢れなきことが証明されると良いですね。

風営法改正時には、不動産・酒類販売・たばこなどのナイトタイムエコノミー支援産業に対し、秋元被告がキーパーソンとして紹介され、企業からも協力に応じた事実があります。

そうした信頼を踏みにじることがないよう、また自らの保身のために事実を捻じ曲げるようなことがないよう願います。

不義理をすれば、必ず報いがあるものですから。

 

 

穢れと清めの風俗営業

 

今回のブログ記事のタイトルには「穢れ」という言葉を用いました。

別に小池都知事のように話題性を生み出すキャッチフレーズをつけるつもりだった訳ではありません。

NHKの報道にあった防護服を纏った警察の家宅捜索をみて、純粋に「穢れた夜の街」という印象をもったことを率直に表現した次第です。

もちろん、夜の街の業界関係者からすれば「穢れた」などの表現をされれば不快と感ずるでしょうし、一般的にも好ましくないと感じる方もいらっしゃると思います。

ただ、私自身が風俗営業を専門に30年のキャリアをもつ夜の街の当事者として、表面的な言葉遊びや専門家の言葉狩りのような忌避ではなく、純粋に感じた本音として「穢れた」との表現が的確だと考えました。

「穢れ」という言葉を調べると「物理的に触れることだけでなく精神的に触れることによっても『穢れ』が『伝染』する」もので、「穢れが身体につくと、個人だけでなくその人が属する共同体の秩序を乱し災いをもたらす」とありました。

■毎回の小池都知事の会見では「どうぞ夜の街への訪問はお控えください」と繰り返し伝えられます。

■警察の家宅捜索では防護服で重装備した警察職員が物々しく立ち入ります。

■SNSを開けば新宿歌舞伎町のホストは見舞金目的でPCR陽性を競っていると揶揄されています。

■飲食関連の同業種からは「夜の街」と一緒にされては風評被害を受けると忌避されています。

これが現代の「穢れ」でなくて、何と表現すれば良いのでしょうか。

感染防止目的の注意喚起や一般市民に分かりやすい表現を行うことは賛成ですが、一方で薄っぺらい理屈の言葉狩りをしているだけ、取締り・自粛すべきはホスト・キャバクラなんかの接待飲食連中だけと被害者意識だけを持っていては更なる社会の断絶、差別を生み出すだけと私は考えます。

「穢れ」の説明には、「戦後の民俗学では、『ケガレ』を『気枯れ』すなわちケがカレた状態とし、祭などのハレの儀式でケを回復する(ケガレをはらう、『気を良める』→ 清める)という考え方も示されている」ともありました。

風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業というのは、つまるところこの『ハレ』としての非日常を体験する場なのだと信じています。

日々の生活に潤いを与えるのが風俗営業なら、『気を良める』ことで「穢れ」を清めるのも風俗営業の体験価値です。

ニューノーマルとして世界が変わっても、「穢れ」を清めるハレの場としての風俗営業は必ず生き残ります。

風俗営業の価値を改めて教えてくれたのが2020年の夏、それが私にとっての「特別な夏」の意味なのかなと感じました。

戦後75年、日本はここまでの経済的繁栄を、そして世界はここまでの人類英知を築き上げました。

コロナウイルスだって必ず克服できるはずです。

明日を信じてまた進みましょう。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

 

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