風営紳士録2.0

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許可を消滅させない会社分割の『春と修羅』

修羅としての行政書士

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

4月となり新年度がスタートしました!

新たな職場や学校など新生活を始める方もいらっしゃると思います。

コロナ禍での春ですが、どうぞ前向きに新しい環境での生活に臨んでくださいね。

さて、3月後半の私は都内各地を駆け回っていました。

我々とおなじように企業である法人にも新しい始まりや終わりがあります。

法人の新生活スタートも新年度に切り替わる今のシーズンに集中しがちです。

そうした法人の新生活応援のために都内各所の役所を周っていました。

行く先々の各所では、桜が満開の見頃となっており、人々だけでなく法人の新しい船出をも美しく彩って祝しているようでした。

ところで、今回の記事タイトルには宮沢賢治の『春と修羅』を冠してみました。

宮沢賢治の心象スケッチと言われる『春と修羅』には、穏やかな優しい春の季節とは正反対の怒りや争いを表す激しさが象徴的に表現されています。

    ああかがやきの四月の底を
   はぎしり燃えてゆききする
  おれはひとりの修羅なのだ
『春と修羅』より引用

 

この春、都内を駆け周っていた私はまさにこの心境でした。

「おれはひとりの(行政書士)修羅なのだ」と(笑)

桜舞い散る穏やかな令和の春ですが、コロナ禍に直面する事業者の皆さんが置かれている状況は修羅の世界そのもの。

行政による補助金・助成金や融資によって何とか耐え忍ぶ方々もいれば、廃業の道を選択される方もいらっしゃいます。

これからのアフターコロナ・ウィズコロナの時代において、どのような選択が正しいかは誰にだってわかりません。

だからこそ、事業者の皆さんが真剣に悩み、考えて出した結論であれば、最大限応援してあげたいと思っています。

残念ながら事業を断念される方であっても、事業売却が出来れば手元資金の足しになります。

そうした会社組織再編の法的手続きのため都内各所を駆け周っていた次第です。

 

 

会社組織の再編手法

 

さて、ここで少し会社組織再編の法律知識を確認させてください。

会社組織の再編には、大きく4つの手法が存在します。

1.事業譲渡
2.合併
3.株式交換・株式移転
4.会社分割

以上の4つです。

許認可実務で重要なのは、「許可」が再編後も継続的に認められるか、という点です。

営業許可は本来禁止されている行為を特別に「許可」しているものですが、その「許可」の対象は申請人であることが前提なので、許可を受けた申請人以外には「許可」が承継されないのが原則です。

4手法のうちの「事業譲渡」とは、一定の営業目的のために有機的に組織化された機能的財産を一体として移転することを言います。

ただ、この「事業譲渡」では「許可」を引き継ぐことは出来ません。

「事業譲渡」は対象となる事業(ビジネス)を目的とした売買契約でしかないので、「許可」は承継されません。

一般的に考えても、売買契約だけで「許可」まで移転可能なら、わざわざ面倒な許可申請をする人はいなくなり、許可制度自体が骨抜きになってしまいますね。

もっとも、「事業譲渡」と同じように事業(ビジネス)を移転させる制度である「会社分割」を利用すれば営業許可の移転が認められます。

「会社分割」とは、会社が事業の全部または一部を他の会社に承継させることを言います。

「事業譲渡」では債権者の個別の同意が必要だったりと手続き的に煩雑な面がありますが、「会社分割」では迅速な会社組織再編ができるため事業者にとって利便性が高いと言われています。

昨年末にも旅館業営業承継を「会社分割」の手法を活用することで効力発生日に関する迅速な対応が出来ました。

なお、「会社分割」には既存の会社に承継させる「吸収分割」会社法2条29号)と新しく設立する会社に承継させる「新設分割」会社法2条30号)が規定されています。

許認可が承継されるか・されないかは許認可それぞれの業法によって扱いが異なりますが、弊所やたべ行政書士事務所では許可を承継させた多くの実績があります。

「吸収分割」「新設分割」「吸収合併」の3事例をご紹介していますので、よろしければご覧ください。

 

 

行政書士の付加価値

 

・・・とまあ、ここまでは知識として知っている人からすれば、ああそうですかとなってしまいそうですが、実はここから先こそが実務経験ゆえの教訓となります。

役所によっては「会社分割」の受付経験がなく、窓口に相談しても有効な解決策として提示して貰えないことがあるという事です。

実際、3月に私が出向いた役所でも「10年やってて初めてです」とコメントされていました。

もちろん、しっかりと手続きを踏んで申請すれば、初見であってもちゃんと受付してくれます。

ただ、疑問点は何でも役所窓口に訊いて、役所窓口のいう事だけを鵜呑みにしているだけでは、必ずしも有効な解決策には辿り着けないこともあるという事をお伝えしたいのです。

単純に窓口担当者の経験値に左右された説明がなされる可能性が否定できないからです。

我々行政書士としても、役所窓口の回答をガキの使いのようにクライアントに伝えているだけなら代書屋の域を出ず、早晩に電子申請に仕事を奪われてしまうでしょう。

専門家として国民と行政の架け橋となるべく、時として役所の担当者にも丁寧に教えてあげるくらいの気概で取り組む姿勢がこれからの行政書士の付加価値に繋がると思います。

書籍やインターネットで集めた情報よりも、実際の実務の方が柔軟な運用を認めているケースもありますので、あきらめる前にしっかりと実績のある専門家にまずはご相談ください。

 

 

世界での『春と修羅』

 

今回『春と修羅』なんて不遜なタイトルを冠したのは、この春、日本以上に辛い試練に直面している世界のニュースを目にしたからです。

ミス・インターナショナル大会という華やかな場で、涙ながらに母国ミャンマーでの惨状を訴えました。

「私がこのステージに立っている間も多くの人が亡くなっています」
「ミャンマーでは人々が民主主義のために戦っています」
「私は今このステージで民主主義のために戦っています」

 

まさに『春と修羅』、華やかなステージに立ちながら母国の惨状を深く悲しみ、怒り、そして戦っています。

自国民に対して発砲、空爆をしている軍事政権ですので、このような発言を許すとは思えません。

報復を恐れずに命がけの本当に勇気ある行動です。

文字通り彼女もまた民主主義のために『修羅』となって戦っているのです。

 

そして、重大な人権侵害が問題視されているのはミャンマーだけではありません。

新彊ウイグル民族を巡っては、アパレルメーカーなどのサプライチェーンに組み込まれていることから、中国側・反中国側双方での不買運動が激化しています。

習政権は、中国と商売をするなら人権問題などの内政干渉をするな、と警告を発しています。

当初、中国の強硬姿勢になびいた企業の中には、その後の世論の反発からさらに日和る企業も出てきました。

もっとも、中国での売上に大きく依存する企業としては本当に辛いところでしょう。

ちなみに、アシックスが手掛けるオニツカタイガーは日本ブランドとして海外でも非常に人気があり、コロナ禍以前のインバウンド市場においても訪日外国人観光客の人気のお土産として、新宿駅などにも外国人観光客向けのポップアップストアを出店するほどでした。

新彊ウイグル民族が関与するサプライチェーンを否定するというだけでなく、習政権が主張するように中国との商売自体をするなとの選択を突き付けられたら、いったいどれだけの企業が中国の要求を突っぱねることができるのでしょうか。

コロナ禍以前の2019年での訪日外国人3,188万人中、中国人は最多の959.4万人で全体の30%にも上ります。

観光産業はじめ飲食・娯楽・サービス・小売と、インバウンド需要全体での中国の占める部分は非常に大きかったと思います。

風俗営業とて例外ではありません。

中国人観光客はカネも使う観光客として上客と認識していた事業者は少なくないでしょう。

そうしたインバウンド需要を切り捨てても、習政権の方針に反発出来るのか。

アシックスの苦悩は、明日はわが身に降りかかる試練なのかも知れません。

 

 

ひとりの修羅として

 

さて、世界での『春と修羅』などと他人事と捉えるだけでは、「他山の石」と捉えるどこぞの政治家と同じとメンタリティとなってしまいます。

そもそも自分たちに反省すべきことは無いか、世界での『春と修羅』を目の当たりにして改めて振り返ってみました。

昨年2020年の夏、ひとつの時代を象徴するブランドの撤退が話題となっていました。

ギャルのアイコンでもあったセシルマクビーの終わりは惜しむ声と同時に、ポストコロナを見据えた事業判断として共感も集まっていました。

特に、こちらのWWDの記事については木村社長の時代を見据えた英断と称賛する声がSNSで多数見られました。

私はと言うと、一年後の2021年の春、世界での『春と修羅』を目にしたときに初めて木村社長の時代を読む目利き力を遅まきながら感じた次第です。

というのも、記事にこのような記載があったからです。

「時代はここで変わる。コロナを経たニューノーマルには、「セシル」が表現してきたようなモノとは全く異なるモノが求められる時代になるという予感が強くしている。」

 

・・・実は、私が木村社長率いるセシルマクビーの運営会社に注目したのは2017年のことでした。

中国人の技能実習生を奴隷のように酷使しているブラック企業として、ですが。

人権侵害とも言える技能実習の労働悪環境の惨状元請企業として社会的責任を果たそうとしない冷酷な対応を報道で知り、胸糞悪く反吐を吐きたくなるような思いをした記憶があります。

ですので、2020年に木村社長の撤退判断が話題となった時も、よくこんな経営者のこと話題にするなと不思議に思っていました。

しかし、改めて今回の新疆ウイグル民族を巡る世界的な不買運動などをみると、これこそが木村社長の言っていた「全く異なるモノが求められる時代」だったのかなと感慨深くなりました。

デザインや機能性以上に、製品やサービスの社会性が消費者の社会性とも同視される時代になってきたのかも知れません。

風俗営業はじめ飲食・娯楽サービス業においても、しっかりと営業許可を取り、法令を順守し、環境に配慮したサービスこそが求められる時代となっていくのではないでしょうか。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

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