風営紳士録2.0

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会社都合での解雇は従業員の救済になるか?

拡がる自粛要請

 

皆さん、こんにちは!
東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

緊急事態宣言にもとづく措置が実施されて初めての週末を迎えました。

緊急事態宣言の対象エリアのみならず、政府は「接客を伴う飲食店」への外出自粛を求める方針を残りの40道府県にも拡大し、全国的に風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業店舗でのクラスター発生への警戒を高めています。

なお、風営法では「接待を伴う飲食店」を風営法1号と分類していますが、今回示された政府の方針では「接客を伴う」(接待ではない)とあるため、風営法1号許可店のみならず、夜の繁華街で営業する飲食店を広く包含しています。

そもそもの目的が「感染拡大防止」であり、風営法の「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持」云々といった目的とは異なるので、両者の射程範囲が異なるのもある意味当然と言えば当然ですが。

いずれにせよ、風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業に携わる皆様にとっては最大限の試練に直面していると言えます。

 

 

ある経営者の決断

 

飲食店の経営を考える際、FL比率(食材費と人件費)が指標として有名ですが、現在のような売り上げが殆ど発生しない状況では仕入れも発生しないので、食材費よりも人件費をどうするかが問題となります。

そんな折、タクシー会社が従業員600名を解雇したニュースを目にしました。

従業員あてにしたためた経営者のメッセージがSNSでも公開され話題となっていたので、ご存じの方も多いと思います。

今回の場合はどちらかというと解雇することで失業保険を選択させてあげた経営者に好意的な意見の方が多いような印象を持ちました。

【解雇した会社社長のメッセージ】
「少しでも早く、皆様が円滑に失業手当をもらえるために決断した次第」
「皆様にお約束いたします。必ず生き残り、皆様の職場を完全復旧できるように、私の人生をかけて戦います」

 

東京労働局のコメント

 

暗闇の中で必死にもがいている経営者の判断としては共感できる部分はありますが、この書面に書かれているような経営判断を他の経営者が行うのは危険です。

というのも、そもそもこのような場合は会社都合による失業保険の受給資格を満たさないと考えるのが通常だからです。

ロイヤルリムジングループの給与体系によれば、休業補償より失業手当の方が従業員にとって有利なのでしょうが、それは実際に600人に受給資格が認められ失業手当が給付された場合の話です。

また、社長のメッセージには触れられていませんでしたが、いつ終わるかもしれない休業手当のために会社が経済的負担を負い続けるよりも、解雇してしまう方が会社にとっての費用負担を限定できるという計算もあったはずです。

実際、本件に関して東京労働局は以下のようなコメントを出したと報道されていました。

「雇用保険の受給資格を有する方の定義は、現に元の会社と雇用に関する契約が完全に失効していて『積極的に求職活動をし、いつでも就職可能』な環境にある方を指します。元の会社に早期に戻ることが約束された状態では、そもそもこの受給資格を満たしていません。」 Business Journalより

動画だけでなく、ご丁寧に再雇用を約束する書面まで残しているので労働局だってこのように回答せざるを得ません。

経営者の全員解雇の判断に対し賞賛の声も集まっていたようですが、もし実際に申請しても受給資格が認められないとなると、評価は一転してしまう可能性があります。

なぜなら、解雇された従業員の就職活動に際して今回の経営者の決断が不利に働く恐れもあるからです。

転職時などに失業手当をもらったことがある人なら、失業給付に関して「会社都合」「自己都合」で受給期間などでの差があることはご存知でしょう。

雇用保険による失業給付とは、積極的に再就職活動を行うことが前提になっています。

今回、再雇用しますよと言われて解雇された従業員の多くは、ロイヤルリムジンより厚遇での雇用条件であれば再就職するが、そうでなければ約束通りまた再雇用を希望している人が殆どではないでしょうか。

再就職面談にしても、本当に入社する意思があるのかとマイナスに作用する可能性があります。

 

 

専門家の使命

 

600名もの従業員を一斉解雇しておきながら失業給付が認められないとなると、経営者の勇み足というだけでは済みません。

この社長は法律知識がなかったのでしょうか?

私にはどうもそうは思えません。

これだけの従業員数なので、事前に弁護士・社労士に相談して経営判断を行うことの必要性も十分に認識していたものだと思われます。

もしそうでなく、本当に勇み足だけで突っ走ってしまったとすると、かなり手痛い判断ミスを行ったと言わざる得ません。

タクシー会社の親会社も同じ代表者が経営を行っておりその経営理念や役員を見る限り、現場たたき上げの熱血漢の経営者が、法律知識無く勢い余って勇み足したというよりも、特例を認めさせるべく一か八かで解雇に踏み切ったというところではないでしょうか。

ロイヤルリムジングループ親会社のIBIのHPより

SNSでの話題づくりにより世論を味方につけることが特例を認めさせることにつながるのであれば、これもまた一つの経営判断なのかもしれませんが、いずれにせよ他の業種業態の経営者が真似するには危険な手法です。

特に全国的に注目が集まっている3密事業者である風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業の経営者の方々には決して安易に考えて真似しないで欲しいです

もしこのような都合の良い解雇が全面的に認められるなら、他の企業も一斉に解雇しはじめ、最終的には社会全体が混乱に陥ることは明らかです。

私、個人としてはロイヤルリムジングループ経営者のメッセージからは嘘偽りのない熱い気持ちも感じましたが、現在のような混乱の最中では誰もが冷静な判断を出来なくなっていることも考えなければなりません。

新型コロナウイルスの感染拡大防止については医療関係者ら専門家の意見に従うのが効果的であるのと同じように、重大な経営判断を行う際は是非とも各分野の専門家に相談してください。

インターネット検索などで調べられる単なる情報・知識ではなく、実際の現場でどのように運営され、望む結果を導ける判断となるかどうかの知恵・インテリジェンスの提供こそが専門家の使命です。

親会社HPをみると「社会インフラ × NEWテクノロジーで、「新しい価値」を創出する。」と謳われています。

タクシーは月に150万円生む1坪の不動産」として事業投資としてタクシーベンチャーを手掛けたようですが、有形固定資産と違って、人材だけは投資判断として簡単に切り捨てることは出来ません。

 

ピンチをチャンスに

 

同じくコロナ禍直撃の民泊事業でも、環境変化に適応してピンチをチャンスに変えるべく果敢に新しい価値を創出している企業もありますので最後にご紹介します。

こちらも週末のワイドショーやSNSなどで話題になっていたバズワード「コロナ離婚」と呼ばれる新たな社会問題の解決を探る取り組みです。

在宅勤務や外出自粛要請により、配偶者や児童に対するDVなどの新たな社会問題が発生していますが、コロナウイルスの影響でインバウンド需要が落ち込み稼働率が低下していた民泊物件を活用することで、この社会問題の解決を目指し「新しい価値」を創出しています。

「コロナ離婚防止の窓口」
運営:株式会社ジーテックカソク株式会社

 

普段は忙しくてビジョンや成長戦略を考える暇のない風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業の事業者の方々も、自粛要請期間中の今はじっくりと今後の進むべき方向性を考える時間があると思います。

今回のような世界的混乱の後に生き残るのは、最も賢い者でもなく最も強い者でもありません。

変化する環境に適応する者こそが生き残るのです。

変化を恐れずアフターコロナの時代を生き抜きましょう!

それでは!

 

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