行政書士は電気羊の夢を見るか
35年前の原風景
こんにちは!東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。
突然ですが、これが何に使用する道具か分かりますか?
爪切りのようなペンチのような。。。
ある一定年齢以上の人なら懐かしいという感情を覚えるはずです。
この道具はここで使うものでした。
今でこそほとんどが自動改札になっていますが、今から35年以上前は駅員が改札にいて、乗客の切符を一人一人切っていたのです。朝の通勤・通学の改札では、切符を切るはさみの音がカンカンカンと小気味良く鳴り響き、ベテラン駅員の手慣れた切符切りはさみの扱いは惚れ惚れするものがありました。
しかも、それだけではありません。現在の自動改札のように乗客の乗車駅情報が読み取れないことから、当時は各駅ごとに切符を切った時の型が相違していて、この切り口の型を駅員は瞬時に読み取り、正規の運賃を支払っているかどうかをチェックする仕事を行っていたのです。
間違いなく職人芸の世界で、仕事の出来る出来ないはこの読み取り、はさみさばきにかかっていたと思います。
現代であれば、この手の作業は当然ながら自動化・電子化されますよね。その方がミスによる機会ロスもありませんし、何より人件費をかけずに、より生産的な仕事に取り組むことが出来ます。
今から35年前のことなので、当然と言えば当然ですが、一方で「AI時代に生き残る」ことに思い悩む現代人はこのような切符切りの仕事に拘泥していてもいけないという示唆も与えてくれると思います。
映画に描かれた未来への不安と希望
同様に35年以上前の映画で描かれた世界観があります。映画の舞台は「2019年11月」のロサンゼルスです。
この映画はレプリカントと呼ばれるサイボーグ・ロボットが、人間の心をもち、人間に脅威を与え、同時に人間とは何かの啓示を与えるという作品です。
作品の中では、人間が望まない仕事に当たるのがサイボーグ・ロボットになっていますが、結果的に2019年の現代でのAIによる仕事を失うことを暗示していたようにも思えます。
一方で35年前には存在しなかった仕事もたくさん生まれました。
もっとも象徴的なものがインターネットにまつわる仕事でしょう。
現代の小学生の将来なりたい仕事の職種上位には「ユーチューバー」が入っていると思います。
35年前も芸能人・TVタレントは人気でしたが、現代ではTVを観るより、スマホで動画を観る時間の方が増えているといいます。インターネットの発達で誰もが情報発信できる環境になった以上、TVタレントにならなくとも、人気ある有名人にはなり得るということでしょうか。
もっとも、ここで注目すべきは昔も現在もメディアは変われど、他人からの承認欲求を満たしてくれる職業が人気なのは不動なのかもしれません。
35年前と現在の士業の違い
では、士業の場合はどうでしょうか?実は士業界も劇的に変化したと言えます。
原因はやはりインターネットやコンピュータのデジタルテクノロジーです。
もっとも分かりやすい例が税理士です。
昔であれば確定申告を行うのだって、税理士の先生に申告書作成をお願いする必要がありました。
ところが現代はPCがあれば会計ソフトで申告することは不都合ありません。インターネット環境であればクラウドに連携させて、カード決済を自動仕訳しれくれるので、簿記の知識すら要らないかもしれません。
単純な申告代理だけの税理士業務は成り立たなくなりました。
では、行政書士はどうでしょう。
これは報酬額で考えると分かりやすいと思います。
35年前であれば、会社設立で30万円の報酬が取れました。もちろん登記は含まれずに申請だけで30万円取っても需要が十分にあったのです。
ところが、現在では1万円程度で請け負っている事務所も少なくありません。
それもそのはず、前述したクラウド会計ソフト会社なら原則無料で会社設立サポートを行っているからです。
その他の許可取得サービスと合わせて、5万円とか7万円といった形で受任する以外、会社設立だけで売り上げを立てていくにはサービスの差別化が難しくなってしまいました。
30分の1までに落ち込むような価格破壊の一番の原因は情報の民主化です。
インターネットを検索すれば、会社設立のイロハから、ひな形、必要手続きまで情報が入手できます。
専門家側も申請書をコピーして流用できるので、ゼロから作り上げる手間がなくなり、定型的なものなら量産できるようになりました。
ただ、量産できるものは、ほぼ間違いなく淘汰されていっています。
現在も生き残っている士業業務とは
一方で、コンピュータなどで定型化・量産化できない業務は、たとえローテクなものでも立派にビジネスとして生き残っています。
やたべ事務所の専門である風俗営業許可であれば、製図作業などはCADなどで合理化されていますが、実際の店舗自体は二つとして同じ物件はないので、店舗測量・製図自体はワンオフで作成される一点物の戸別受注生産品となります。
そして何より、申請者の個別事情を踏まえた許可申請や実地調査対応なども、合理化できそうで出来ない領域で専門家の手腕に残されています。
実はやたべ事務所では風俗営業許可以外にも、外国人の在留許可や産廃許可などを手掛けることもありますが、いずれもテクノロジーで代替されえない本質をもった業務です。
ご紹介した映画『ブレードランナー』でも、テクノロジーの象徴であるサイボーグ・ロボットから逆に人間であることの価値を教えてもらうというのが主題として描かれています。
行政書士業務をはじめ、士業業務でも生き残っていく領域は人間臭い領域、つまりテクノロジーで代替できない領域であることは間違いないと思います。
35年前も、今も、そして35年後も、本質というのは普遍的なものなんでしょうね。
それでは、また!
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