風営紳士録2.0

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自動車電動化から考える風俗営業の事業転換

コロナ後の3つの視点

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

コロナ第3波による感染拡大抑止のための「勝負の3週間」開始から既に2週間が過ぎようとしていますが、新規感染者数はなかなか収束に向かいません。

札幌ではついに休業・外出自粛要請を25日まで延長することを決定しました。

25日って、それクリスマスですよね、、、戻らないクリスマス、いや~これは厳しい。

さらに大阪では最も起こってほしくない所でクラスターが発生してしまいました。

東京も感染拡大が収まっていませんが、「勝負の3週間」の残り1週間では現状を踏まえての追加自粛要請の判断が慎重に行われると思います。

GoTo開始前の夏には社会経済活動への配慮から積極姿勢を示していた尾身会長も、現状の感染状況を踏まえてトーンダウンさせてきました。

東京でも「勝負の3週間」の残り1週間で追加要請・対策の判断がなされるかも知れませんが、くれぐれも慎重に行って頂きたいと思います。

世界ではワクチン接種が既に開始されていますので、何とか一日でも早くこれまで通りの日常が戻ってきてもらいたいものです。

アフターコロナ・ウィズコロナ時代というと、「もう元には戻らない新常態」という表現を目にすることがあります。

ただ、単に不可逆な過去を羨んで未来を憂うのでなく、3つの視点をもって未来を切り拓くことが大切ではないかと思います。

1.戻ること・戻らないこと
2.戻るべきこと・戻るべきでないこと
3.戻って欲しいこと・戻って欲しくないこと

「戻ること・戻らないこと」というのは未来が現実となれば事実として客観的に明らかになることでもあります。

ただ、我々は漫然と事実が現実となるのを受け身で待つのではなく、自らの意志の力で「戻るべきこと・戻るべきでないこと」「戻って欲しいこと・戻って欲しくないこと」を志向していくことが大切ではないかと思うのです。

コロナ禍でのテレワーク導入によって通勤時の満員電車から解放されることなどは「戻るべきでないこと」ですし、「戻って欲しくないこと」でもあるでしょう。

一方で、テレワークそのものは直接のフェイスツーフェイスによるコミュニケーションの価値を気づかせてくれたこともあり、「戻るべきこと・戻るべきでないこと」の両面があるかも知れません。

もちろん、夜の街での歓楽は私にとって最も「戻って欲しいこと」です。

風俗営業はじめ飲食・娯楽サービス業においても、感染予防対策の徹底をはじめオンライン化・省人化などの様々な取り組みが行われているようです。

今回はそうした事業転換について、自動車電動化の流れから考えてみました。

 

 

アメリカン・レガシー

 

大統領になる人にとっても「戻って欲しいこと」ではあるけど、「戻るべきでないこと」というものが存在ます。

まずはこちらの動画をご覧ください。

オバマ時代のバイデン副大統領のオフタイムでの番組です。

副大統領の要職に就任したことによって自らハンドルを握ることが出来なくなった車好きのバイデン次期大統領が久しぶりに愛車をドライブするワンシーンです。

この車、アメリカ製のシボレー・コルベットというスポーツカーで、中でもこちらのスティングレイと呼ばれる第2世代モデルはマニア垂涎のモデルです。

1967年の夏、父親から結婚祝いに贈られたもので、新車から今まで所有し続けているそうです。

そんな素敵な想い出がつまった車は、まさに「戻らない」時代の記憶が蘇る「戻って欲しい」アメリカン・レガシーと言えるでしょう。

とはいえ、こうした工業製品としてのガソリン車に対しては「戻るべきでないこと」としての評価が現代では与えられています。

とりわけ環境負荷の大きいV8エンジンのコルベットとなれば、カーボンニュートラルからは程遠い存在として、副大統領時代以上に乗ることが憚れる存在となりそうです。

バイデン次期大統領はコルベットの電動化にも言及したこともあり、こうしたアメリカン・レガシーが電動化され時代に求められる変化を遂げる時代を迎えることになるのかもしれません。

実際、コルベットと双璧をなすもう一つのアメリカン・レガシーのハーレーダビッドソンは既に電動モデルを発表しています。

かつてハーレーと言えばドコドコと独特な振動のVツイン型エンジンが象徴でした。

ところが、最新の電動モデルでは「キュウィーーーン」とジェット戦闘機のような音が鳴るそうです。

余談ですが、今どきの幼児はおもちゃの自動車で遊ぶとき「ブーブー」ではなく、「ウィーンウィーン」と言うそうですね。

未来のドライバーは2030年代を先取りしているということでしょうか(笑)

 

 

ガソリン車ゼロの衝撃

 

海の向こうのアメリカン・レガシーに思いを馳せていた折、小池都知事がコロナ対策とは別に気候温暖化問題への対策を打ち出したとのニュースを目にしました。

小池都知事としては、「大都市としての責務」であることを強調し、脱炭素運動に向けた取り組みを積極化させようと張り切っているそうです。

ガソリン車(によるCO2排出)は「戻るべきでないこと」であり、「戻って欲しくないこと」として具体的期限を定めた目標が打ち出されました。

環境大臣時代にクールビズ定着を通じて人々の行動様式を変革させた実績を誇りにしているでしょうし、環境問題に対し責任ある取り組みを行っていくというのは結構なことだと思いますが、正直これは驚きました。

2030年というと、もう10年ありません。

東京都での1年間での新車販売はおおよそ20~30万台に登ります(東京自動車販売協会サイト参照

これらの60%がガソリン車だとして、15万台以上の販売が非ガソリン車への転換を求められることになるのです。

こんな言い方をしてしまうとなんですが、感染拡大という差し迫ったリスクを前にしたGoToの場合でさえ、観光産業に配慮して中途半端な選択を選ばざる得なかったはずです。

市場規模、就業人口の大きさからして、観光産業と比較にならない規模の自動車産業を相手にこの目標達成を貫徹できるとは到底思えないのですが。

【市場規模マップ】

 

自動車産業というとトヨタやホンダといった完成車メーカーばかりに目が行きがちですが、完成車メーカーに部品を供給する系列部品メーカーの方が市場規模が大きく、就業人口も多くなります。

自動車会社の系列グループには大田区や東大阪などに所在する町工場も含めた中小・零細企業など多くが関わっており、多くの人々の雇用を支えています。

仕出し弁当のメニューを変えるのとは違って、東京都向けだけに非ガソリン車メニューを増やすなどと簡単に対応できる訳なく、完成車メーカーを頂点に系列組織全てに影響を与える方針決定と言えます。

コロナ禍での自粛に対して経済苦での自殺者増や観光産業・外食産業を救えとばかりに経済の大切さを訴えている人々だって、自動車産業が日本経済に与えているインパクトの大きさが分かれば黙っていないと思います。

 

 

小池流政策3つの要素

 

一見、実現可能性が乏しいようにも思える今回のガソリン車ゼロ目標ですが、どうして小池都知事はこのタイミングで発表したのでしょうか。

もちろん、全世界的な気候変動問題解決に向けた取り組みとして、政府が掲げる脱炭素社会・2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとも足並みを揃えたものと考えることも出来ます。

ただ、もっと穿った見方をしてしまうと、小池流の計算があるのではないかなとも思えます。

小池都知事がフリップボードを掲げて誇らしげに方針を発表する際、3つの共通する要素があるように思います。

1.世界の潮流・社会的大義を捉える
2.国より前倒しで取り組む姿勢を示す
3.実現可能性より世論の共感を重視する

都議会第一会派の都民ファーストの会も小池都知事の方針に賛同表明を直ぐに行いました。

実は、この構図・流れと言うのは数年前にも同じようにありました。

受動喫煙問題に対する対策として、国の健康増進法改正を後進的であると批判し、東京都独自の受動喫煙防止条例を制定したときのことです。

たばこ関連は上記3要素の全てを満たす絶好の政策でした。

東京都受動喫煙防止条例は本年2020年4月から施行されており、風俗営業はじめ飲食・娯楽サービス業に携わる事業者の皆さんは対応に追われたはずです。

この時もスモークフリーの世界的潮流に合わせて、五輪開催都市に相応しい社会環境をつくりだそうと躍起になっていました。

都知事選の公約に掲げていたこともあり、国の規制より厳しい規制の必要を訴え、非喫煙者の共感を広く取り付けて条例制定・施行に至る、、、はずでした。

 

 

例外規定の拡大解釈

 

でも、実際の喫煙環境はどうなったでしょうか。

「屋内の受動喫煙による健康影響を未然に防止すること」を目的として法改正・条例制定されたはずですが、都内では堂々と「タバコ吸えます」を売り文句にしている飲食店が散見されます。

逆張りのポジショニングで、喫煙者をターゲットとしたブランディングを行う店舗も出てきました。

【THE SMOKIST COFFEE】

【Club JT 喫煙できるスポット検索】

屋内での喫煙は規制されたはずがこうして堂々と喫煙OKサービスが展開されています。

法令制定プロセスにおいて喫煙者やたばこ産業界に配慮して、中途半端な例外規定を設けたからです。

【喫煙目的室】

本来はたばこ販売店向けの特例だったのが、シガーバーなどに広げられ、さらにはスナックなどの風俗営業許可・届出関連店舗にまで広げて解釈されるようになりました。

東京都福祉保健局のサイトでも「喫煙目的室」の例示としてスナックと明示されていますので、別に制度の悪用でも、脱法的な裏技でも何でもありません。

詳細はこちらの記事をご参考にしてください。

【受動喫煙条例対策としてたばこ出張販売許可を取ることの落し穴】

 

たばこ出張販売許可という手続きとその他の要件を満たせば喫煙目的室とすることが出来ますので、スナック以外にもカフェ・シェアオフィスなどどんどん拡大されています。

屋内での原則禁煙の喫煙環境整備からはかけ離れた運用がなされつつあるのが社会の実態という訳です。

かく言う我々行政書士もその一翼を担っており、今年の初めまでは出張販売許可すら知らなかった行政書士が本制度をガンガン利用して喫煙目的室としての店舗を増やしてきました。

一方で、せっかく高い理想をもって法令を制定しても、こうした中途半端な例外規定を設けることで、例外が拡大解釈されてしまう現実に直面することになります。

東京都の受動喫煙防止条例では、国よりも先進的な取り組みを行うとの理想の下、都民ファーストの会が条例制定に中心的な取り組みを行いましたが、妥協の産物として中途半端な例外規定を設けたせいで、結局屋内でも喫煙が行われている現状に甘んじています。

正直に言えば、我々のような行政書士などは出張販売のような簡単な申請で稼がせてもらえるのはありがたいことではありますが、本来の法の趣旨・あるべき理想社会の実現という意味では例外規定がどんどん拡大解釈されていくのは明らかにマイナスです。

何より、事業者は受動喫煙対策の対応で出費を強いられた上、今回の感染拡大防止対策でも更なる設備投資を求められ、真面目な事業者が損するような不公平な費用負担となりかねないからです。

どうせ守らなくていいのなら、余計なエネルギーや出費が嵩まないように最初から条例や方針など打ち出さないで貰いたい、との事業者の本音が議会に届いてもらいたいものです。

内燃機関としてのガソリン車向けの自動車関連産業が電動化へと舵を切るのに求められる設備投資の負担がこの比ではないことは想像に難くありません。

2030年には自分は都知事をやっていないだろうとの計算があるとは思いたくありませんが、少なくともこれから湧き上がる産業界の声、特に中小・零細企業の声を真摯に受け止め、それでも理想の社会の実現に必要であるかを改めて検討すべきです。

 

 

事業転換の要諦

 

ガソリン車が電動化されることで使用される部品数は大幅に減り、必要とされる製造技術も大幅に変わってくるでしょう。

これまでの技術・ノウハウが電動化にも応用できれば良いですが、そうでない場合は事業転換が求められます。

コロナ後を生き抜くための風俗営業はじめ飲食・娯楽サービス産業でも事業転換が求められてくるケースが増えると思います。

こうした事業転換を行う際、重要となることはどんなことでしょうか。

素人考えではありますが、冒頭に掲げた3つの視点で考えることが大切ではないかと考えています。

1.戻ること・戻らないこと
2.戻るべきこと・戻るべきでないこと
3.戻って欲しいこと・戻って欲しくないこと

何が「戻ること・戻らないこと」になるかは誰にだって100%は分かりません。

でも、確実に「戻らないこと」に対してはエネルギーを使うべきではないでしょう。

そして大切なことは「戻って欲しいこと」かつ「戻るべきこと」と信ずるものにフルスウィングで注力していくことだと思うのです。

「戻って欲しいこと」というのは自らのマインドに関わる自分軸です。

「戻るべきこと」というのは社会性に関わる他人軸です。

この両者の重なる領域で未来を現実としていくことが事業転換の要諦だと考えるのです。

難しい専門用語では、コアコンピタンスを活かしたピボットなどと言われますが、私なりに言わせて貰えばに「自分がワクワク」して、「社会もワクワク」することを選択することが強みを活かすことに繋がるというところではないでしょうか。

日本経済の基幹産業である自動車産業をリードするトヨタのトップである豊田章男さんが非常に有益な示唆を与えてくれています。

よろしければご参考にしてください。

【豊田章男に学ぶ風俗営業の価値】

 

また、受動喫煙という社会問題に真正面から取り組んでIQOSを開発させたフィリップモリス社の日本法人社長シェリー・ゴーさんもこのように述べています。

日経フォーラム世界経営者会議
「喫煙者にとって最善の策は喫煙をやめることだが、吸い続ける人がいる以上、より害の少ない代替品を提供するのがわれわれの役目だ」

今でこそ加熱式たばこが市民権を得ていますが、フィリップモリス社はIQOSを開発するために10年以上前から研究開発を重ね、副流煙の危険性がより高い燃焼式紙タバコを全否定するという方針を打ち出してまで社会に訴えました。

加熱式のみならず、燃焼式紙タバコも容認する中途半端な例外規定が法令で設けられたため、フィリップモリス社の社会貢献へのフルベットは十分に活かされませんでしたが、それでも「戻るべきでないこと」「戻って欲しくないこと」を明確にして自己否定する勇気をもった取り組みだったと言えます。

 

 

<エグゾーストノートを炸裂させたドライブ>

 

<ニコチン入りの喫煙体験>

 

これらは「戻るべきでないこと」かも知れませんが、同時に「戻って欲しいこと」と願う人々だっています。

 

<酒とバラの日々>

 

これを願う人々だってたくさんいます。

本来は非日常での体験価値や高付加価値化が実現できるビジネスというのが風俗営業の魅力です。

飲食・娯楽サービス業での事業転換を考える際、何が「戻って欲しいこと」で、何が「戻るべきこと」なのかしっかりと認識して取り組まれてはいかがでしょうか。

オンライン化や省人化など、一般的な産業でのデジタル化・DX化は、風俗営業はじめ飲食・娯楽サービス業では必ずしも有効でない場合だってあるかも知れません。

接待・接客など感染拡大の元凶とされていますが、風俗営業での「ワクワク」を考えるとどうしたってフェースツーフェースの人間同士の関りにこそ本質があると考える人は少なくないはずです。

お客さんが何に「ワクワクするか」、自分が何に「ワクワクするか」、そして社会が「何にワクワクするか」を見極めることこそが風俗営業の事業転換の要諦となると思います。

風俗営業での「戻るべきこと」「戻って欲しいこと」を大切に未来を切り拓いてください。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

 

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