風俗営業許可店のパネマジに景表法違反は成立するか?
アイコスの会員登録に待った!
こんにちは!
東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。
加熱式たばこアイコスの割引販売が違法広告として消費者庁から再発防止命令を受けました。
2015年9月~2018年5月までに展開したアイコスのコンビニでの広告に関して、期限を定めたうえで「今なら会員登録すれば○○円OFF」と宣伝していましたが、期限経過後も広告を造り変えて期間限定キャンペーンを継続していたことが悪質であるとして、「取引を急がせ、あおるような表示により、消費者の自主的な選択に影響を与えた」ことを理由とした再発防止命令です。
このアイコス割引キャンペーンは、コンビニだけでなく、たばこ販売店店頭や大手家電量販店店頭などでも展開されていました。やたべ事務所が所在する新宿区でも昨年夏は盛んに宣伝が行われており、一部地域住民や行政関係者などからは、喫煙商品の強すぎる営業ではないかと問題視する声も上がっていました。会社としての方針を拡大解釈した一部社員の行き過ぎた行動かとも思われましたが、今回の行政命令をみるに会社全社的にかなり焦りがあったのかもしれませんね。
このような消費者の誤認を引き起こすような問題のある広告は大手企業だけに限りません。風俗営業をはじめ、飲食娯楽サービス業などでも問題となりがちですが、一方で「誤認」といえるかどうかが微妙なこともあり、全ての問題が表面化している訳ではありません。
一番有名なのが、食べログなどの口コミサイトでの意図的な評価でしょう。ステマと呼ばれる店側の意向を汲んだ書き込み・評価もあれば、アンチとして否定的な低評価を加えるものもあります。これはアマゾン評価などでもそうでしょうが、すでに利用者である消費者側も「サクラ」の存在を前提にしており、あまりに評価が高いものやあまりに低いものは割り引いて解釈するようになっていることから消費者の「誤認」があまり問題になりづらくなっているのかもしれません。
同じことは風俗営業にも言えると思います。サイト上は広く綺麗に見えたVIPルームも実物はかなり狭く、年季が入っていたことからはじまり、性風俗関連でのサービス提供者のビジュアルのギャップなどまで、風俗営業広告はある意味どれだけ消費者の「妄想」を引き出せるかの手腕の見せ所でもあると言えると思います。
景表法の誤認とは?
ここで記事タイトルに戻りますが、景品表示法の「誤認」には①優良誤認と②有利誤認に分かれます。
※写真と記事内容は関係ありません
サービス提供者を写真パネルで確認した際、実際よりも著しく美人・美男に演出し誤認を引き出す場合、①優良誤認となります。
→「優良誤認とは実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの」
期間限定価格として今ならキャンペーン価格でサービスを受けれるとして誤認を引き出した場合、②有利誤認となります。
→「有利誤認とは、競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの」
・・・・・・となると、風俗営業は景表法違反だらけですね(笑)
宣材用写真パネルを加工する所謂パネマジは常識ですし、エステなんかでも365日何かしらのキャンペーン価格でやっていて、逆にキャンペーンに言及しないレア客だけに例外的に一般価格を案内するのが通例です。
それでも問題にならないのは、口コミサイト同様に、そういうサービスなのだという消費者側の割り引いた感覚が前提になっているからかもしれません。
何よりせっかく風俗営業で粋に遊ぶなら、細かいこと言わずに一期一会のフリー入店の出会いを楽しむか、指名料金をケチらずに支払ってお気に入りと楽しむかで臨むべきということでしょうか。
いずれにせよ、風俗営業であっても、飲食店サービスであっても、景表法違反は原理的には成立します。ただ、パネマジでの誤認を立証するのが難しいかもしれませんけどね(苦笑)
その意味では、こうしたハンドルの遊びが許されない産業、商品だったからこそアイコスの違法広告は問題になったのかもしれません。
ビジネスに際しては、しっかりと自身の産業や商品サービスの特性を見極めて、超えてはいけない一線をしっかりと見極めて取り組んで行く必要があります。言うまでもなく、風俗営業において重要なのは景品取引法違反よりも、風俗営業違反です。営業許可・届出はしっかりと行ってくださいね。それでは、また!
大変興味深いお話でした。
風俗つながりで一つお伺いしたいのですが、例えば:
派遣型風俗店のHPにて、ある特定のサービス(俗に言うオプション)を目玉サービスとしてアピールしている文章が記載されていたのにも関わらず、実際利用するとそのサービスを利用できなかった
というケースだと景品法もしくは何らかの法に抵触しないのでしょうか?
たな様
ご質問頂いた「実際利用するとそのサービスを利用できなかった」ケースが、まさに景表法の「有利誤認」にあたる事例ですね。
目玉であるオプションサービスを利用するには、まずは通常のサービスを申し込まなければならないため、「取引条件についての表示」と言えるからです。また、HPで目玉サービスとしてアピールしていたとなれば、「一般消費者に誤認される表示」と言えますからね。
不動産仲介などでよくある客寄せのためのおとり広告と同じようなものですね。
もっとも、こうした机上での法律判断と現実世界での権利の主張は別問題となる場合もあるので注意して下さい。
そもそも、「特定のサービス」が風営法上認められているサービスでないと法的に保護されないからです。
俗にいう「本番行為」は、ソープランドを含め、どのような許可・届出形態でも現行法上は認められていません。
違法なサービスだと、事業者側が処罰されるのはもちろん、利用者としても法的権利としては主張できないことになります。
現実問題としては、景表法の問題となるより、営業行為そのものを規制する風営法での判断となると思います。
よろしくお願いします。
やたべ様
こんばんは、たなです。
お忙しい中、迅速な回答ありがとうございます。
非常にわかりやすく説明していただきとてもありがたいです。
たしかに、例えるならば不動産業界におけるおとり広告とまさに同様ですね。
やたべ様のご回答された内容を踏まえると、もし上記の「特定のサービス」=「AF」の場合だと景品表示法違反に該当するという認識であってますでしょうか?
もしそうである場合、消費者庁(または他の公的機関)に本件の景表法違反の疑いについて情報提供をするとなにかしらのアクションをしてくれるのか、もしくはやたべ様のおっしゃられていたように、机上での法律判断とは異なり実際は黙認、または取り扱ってもらえなかったりするのでしょうか?
私自身は店舗に対し何らかの権利を履行しようとするつもりはないのですが、平然と違法行為をしていながら営業している店舗には、いかなる業種でもしかるべき処置を受ける必要があると考えております。
たな様
私の個人的見解を言わせて貰えば、「特定のサービス」がどのようなものであれ、その表示で集客している以上は有利誤認を発生させていると思いますよ。本番行為どころか、キャストの写真を原型とどめないレベルまで修整する行為だって有利誤認・優良誤認が発生すると確信しています(笑)
ただ、そうした行為が実際に景表法違反行為として認定されるかは難しいと思います。景表法第2条4項には法律が規制する表示の対象として「内閣総理大臣が指定するもの」という縛りがかかっています。性行為をはじめとしたサービスは風営法上の営業サービスとして認められていませんから、景表法上も指定対象になっていないと思うからです。
もっとも、当サイトも含めてネット上の情報を鵜呑みにせず、実際に違反事実を認定している行政庁に問合せしてみるのが確実ですし、納得がいくかと思います。念のため連絡先をお伝えしておきます。
【消費者庁表示対策課】TEL 03-3507-8800
余談ですが、先日、兵庫県尼崎市にある「かんなみ新地」と呼ばれる風俗街に対し、行政指導が行われ、30店舗以上が一斉に閉店したことが報道されていました。遊郭として約70年以上の歴史がある「かんなみ新地」では初めての行政介入だそうです。
2025年に大阪万博が開催される政策目的での取り締まりか、と言われていますが、要するにこれまでは「黙認」してきただけということです。交通違反取締をはじめ、行政活動というのはこうした「黙認」を前提としているケースが少なくありません。一方で、たな様の「平然と違法行為をしていながら営業している店舗には、いかなる業種でもしかるべき処置を受ける必要がある」というのもまったくもって正論です。
やたべ行政書士事務所としては、風俗営業事業者を支援する専門家として、法令順守の大切さを強調しつつも、風俗営業事業者が最大限営業できる環境づくりに取り組んでいる立場です。どうぞご賢察いただき、あとはたな様のご判断にお任せ出来ればと思います。
よろしくお願いします。