風営紳士録2.0

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風俗営業許可を申請したニューハーフの依頼者

「LGBTには生産性がないから税金を投入して支援する必要がない」

 

とある政治家の寄稿文が話題となりましたが、風営業の世界ではLGBTの方々がビジネスの生産性を追求する姿勢は昔から感心させられます

 

今から10年前のお話しをご紹介します

平成18年5月の風営法改正直後の話です

 

女性の声で「近くに来ているので、デリバリーヘルスの書類を至急作ってください」
と切迫した電話があり、事務所には大柄な女性がやってきました

 

 

するとどうでしょう、その女性(?)は早口のおんな言葉で

「警察に踏み込まれちゃったのよ!」
「あったまにきちゃうわ! 警察に呼び出されて、届出を出せっていうの」
「私たちニューハーフのデリだけど、権力の横暴じゃな~い?先生書類作ってくれます~う!」

 

ままままっ、参ったなーと思いつつも、警察の指導で逮捕されかねないというのであれば書類を作ってあげない訳にもいかず、届出書類の図面作成のため彼女の事務所を訪問することにしました

 

彼女の事務所はピンク色の壁紙に何故か床は鏡張り。受付カウンターには大判の写真が数枚

 

ジェニファーちゃんやらマリンちゃんがにっこり微笑んでいるではありませんか・・・

 

書類を作って彼女を伴い所轄警察へ行くと、風俗営業許可の受付担当者が

「先生、ニューハーフの届け出っていらないんじゃないですか?」

「えっ! こちらの警察官に叱られ書類を出すことになったんですが・・・」

「本部に確認してきます・・・」

「先生、性風俗の届出に関しては、条文に『異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、・・・』と書かれているので、法の趣旨にそぐわない。即ち届出は不要とのことです」

「え、えっええーーー!」
「それじゃあ、私が怒られたのは何だったのよ!」
「どーしてくれるのよ!!」

とまあそんな押し問答が続き、興奮冷めやらない彼女をなだめすかし、警察署を後にしたのでした

風俗営業の許可では、ホステスさんのいるバーであっても、ホストクラブ、おなべクラブ、おかまバーであっても「接待」行為があれば許可が必要になっています

 

にも拘わらず性風俗関連営業の条文には「異性」と限定されているため、このような事態が起こってしまうのです

改正があったばかりで、且つ緊急事態ということもあり、こんなことになってしまいました

思い込みには気をつけなくてはいけないということと、法の矛盾を感じた事案でした

 

 

「異性に対する性的サービス」という決まりの中で、ニューハーフ(男性)による男性への性的サービスは、風営法の「性風俗」としての届出の必要はないとの警視庁の見解でした

しかし、デリヘルを経営している彼女(?/実は男性)からしてみれば、広告宣伝をするにあたり、広告代理店から「警察への届出確認書」のコピー提出を求められています

広告代理店からすれば、無許可や無届け業者からの新聞・雑誌への広告宣伝の掲載依頼を受けてしまうと「お上」から叱られてしまうことになり、広告媒体からも閉め出されてしまうことになります

そんな状況のため「届出の必要は無し」といわれても、彼女としては広告ができないというのも困りものです

そこで彼女は「届出の必要が無いという、証明書を出してよ!」と警察担当者に詰め寄りました

それは当然のことですが、受付担当者としては「届出のいらない」という証明書など出したこともなく「要らないものは要らないんです」「証明なんか出せません!」・・・「出してよ!」・・・「出せません!」の応酬の中で・・・「もしかしたら、女性を使うこともありますよね?」と担当者

彼女「うん?」

私「うん?!」「なあるほど!!」

女性を使うのであれば、届出は受理され、届出確認書が出ることになります

柔軟性のある担当者が、便宜的ではあるにしても、少しの可能性でもあれば届出は受理してくれるとのこと。・・・「いいねー!」

それで上手く着地するのかと思いきや、彼女の一言で決裂!

「そんな小細工、私絶対にしません!!!」

彼女のプライドとこだわり。もっともな話かも知れませんね

 

 

風営法条文では「異性」と限定しているため、

ニューハーフ専門のデリヘル営業は届出が不要というおかしな現象が起こっています

しかし風営法においては、バーやクラブのように接客を伴う営業は

同性、異性に関わらず「接待行為」が行われれば営業許可が必要になってきます

 

従って、ホステスさんを置く店ばかりでなく、

女性客を対象とするホストクラブやニューハーフのクラブ、オカマさんのバー、

女性が女性を接客する「おなべさん」のバーなど全ての営業形態が風俗営業の対象になっています

営業時間は深夜の0時若しくは1時迄が営業時間となります

ある警察署でおなべさんの許可申請をした時のことです

 

生活安全課の年配の担当者が書類をチェックしていると、住民票を見てはたと気がついた様子で顔を上げ

 

「もしかしてあなた女性?」

 

尋ねられたボーイッシュな申請者は

 

「はい、そうです」
「私、おなべなんです」

 

(あやーっ、そんな言い方しなくていいのに)

「・・・、お客さんは男なの? 女なの?」
「どんな営業形態なの?」
「今までどんな仕事をしていたの?」と担当者は申請事務そっちのけで興味津々の質問をしました。

 

「お客さんは主に女性で、オカマバーより地味なショーパブです」

「判りやすく言うと宝塚のような感じです(私)」

 

「私たち、男性のような格好はしていますが小柄で力は無いもので、差別もあって・・・」
「前職はニューハーフのショーパブのボーイさんで、その前は道路工事の交通整理・・・」

「えっ! ニューハーフの・・・ショーパブの・・・ボーイさん?・・・」

話を「性同一障害」に持ってゆき一通りの話を終えると、年配の担当者は

「うーん・・・」
「ご両親も大変だったんだろうね」と言って受理印を「ポン!」

書類のチェックもそこそこに、「頑張ってね」と励まされつつ警察を後にしました

長年、風俗営業の申請に携わっていると、変わった申請者や不思議な営業に遭遇します

知り合いの行政書士の話によると、ニューハーフにおなべさん、ホストにキャバ嬢といった全ての従業員が揃ったお店の申請をしたそうです

そのお店の名前が聞いてびっくり、何と「動物園」

笑い話のような本当の話です

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