風営紳士録2.0

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メイドカフェに風俗営業許可は必要か?

メイドカフェの摘発

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

東京・秋葉原でメイドカフェ5店舗が風営法違反で摘発されました。

報道によれば、「メイドカフェに見せかけて」風営法の許可が必要な接待飲食営業を行っていたことから、無許可営業として摘発されたとあります。

素人感覚でこのニュースを観たときの第一印象は、「え!メイドカフェも風俗営業になっちゃうの?」というものではないでしょうか。

キャバクラやガールズバーなどの風営法違反での摘発というのはよく目にしますが、メイドカフェというのはあまり聞きません。

しかも、経営者はじめ関係者が逮捕までされています。

今回、逮捕された関係者には20歳の女性店長なども含まれているようです。

逮捕・勾留は身体拘束を伴う重大な人権制約なので、逃亡や証拠隠滅のおそれありと裁判所が許可した場合のみ認められるのが原則です。

メイドカフェで萌え接客するのって本当にそんなに違法性があることなんでしょうか?

また、同じような業態のサービスを展開する事業者としても気になる所だと思います。

そこで、今回はこの事例を通じて、メイドカフェに風俗営業許可は必要か、そもそも風営法違反となる基準は何かを考えてみましょう。

 

 

法律上の建て付け

 

結論から言ってしまうと「接待」を伴っていなければ、メイドカフェに風俗営業許可は必要ありません。

これはイケメン執事がサービスする王子喫茶であっても、ガールズバーであっても、どのような業態であっても結論として変わりません。

なぜなら、「接待」を伴わなければ接待飲食としての風俗営業に当たらないからです(風営法2条1項1号)

ここで注意すべきは「カフェ」「喫茶」といった業態名で判断されている訳ではないということです。

一般の感覚ですとキャバクラやガールズバーなどは風俗営業っぽいけど、カフェとか喫茶と付けば一般の飲食店となるのではないかと思われがちです。

しかし、業態名では区別せずに、あくまで「接待」を伴っているかどうかで判断するのが法律上の建て付けです。

ちなみに、実際の風営法の条文上も、警視庁の風俗営業説明でも、接待飲食としての風俗営業業態として「カフエー」が明示されています。

「接待」を伴っていれば風俗営業に該当するので、風俗営業許可が必要となり、許可を受けずに営業すれば無許可営業となります。

逆に「接待」を伴っていないと説明できるなら、風俗営業許可は要らず、許可を受けなくても処罰されることはありません。

まずは、風俗営業許可の要否は、業態で一律に決まるのではなく、サービスが「接待」に当たるかで決まるということを理解してください。

では、次に風営法の「接待」って何?どんなことすると認定されるの??という点をやたべ流にご説明しましょう。

 

 

やたべ節炸裂コーナー

 

今回のようなニュースが報じられると、お約束のように専門家から風営法「接待」の講釈が展開されます。

我ら行政書士の立場からすれば、「ホラ、風俗営業許可取らないと逮捕されるのだから許可を取りましょう」と宣伝したくなるところでしょうか(笑)

ただ、せっかく本ブログを見に来ていただいた皆さんには、何か新しい気づきを得て頂きたいので、あえてやたべ独自の視点での意見をお伝えしたいと思います。

ちなみに、教科書的な説明が必要な方はこちらの過去記事をご参考にしてください。

風営法の「接待」について警察の解釈運用基準に基づいて解説しています。

参考【風俗営業許可が必要になる「接待」とは?】

 

実際に事業として取り組む上で、風俗営業に当たるか当たらないかは営業時間の点で売上を大きく左右します。

深夜1時(もしくは0時)までしか営業できないか、深夜営業もできるかは酒類提供サービスでは極めて重要な別れ道です。

他方で営業実態が風俗営業に当たると認定されてしまうと、無許可では今回の事例のように逮捕され刑罰を科される危険性もあります。

理想としては、風俗営業には当たらないとした上で営業時間の上限を外しながら、儲けの大きなサービスを展開したいというのが事業者の本音だと思います。

要するに、どこまでやったらアウトで、どこまでならセーフなのかの具体的基準を知りたいのではないでしょうか。

この点、接待飲食営業にまつわる古くからの都市伝説として、キャバクラのようにお客さんの隣に座って談笑すると「接待」だけど、カウンター越しなら「接待」にあたらないからセーフというものがありました。

ところが、今回の摘発で、カウンター越しでの接客でも「風俗営業に当たると判断」されることからも判断基準にはならないことが改めて証明されてしまいました。

もっとも、今回の事例をもってメイドカフェを開業するなら絶対に風俗営業許可が必要なんだ!と考えるのは早計だと私は考えます。

なぜなら、今回に限らず、風俗営業の摘発というのは一定の政策目的をもって遂行されることが少なくないからです。

 

今回の報道をみて、こんな疑問を抱いた方はいらっしゃいませんか?

もしカウンター越しでの談笑相手となることが風営法の「接待」に当たるなら、一般的なスナックやバーなど、かなり多くの業態が風俗営業に当てはまってしまうのではないか?と。

前述した解釈運用基準によれば、「接待」の主体は異性に限られるものではありません(第4、2「接待の主体」)

新宿ゴールデン街や思い出横丁、あるいはカウンターだけのワンオペ深酒店でマスターと趣味の話で盛り上がるのも談笑です。

 

純粋に女性バーテンダーと酒談義することや女性店主と料理談義することだって談笑です。

 

これらの談笑は風営法の「接待」に当てはまらないのでしょうか?

他のお客さんが居なければ、こうした飲食店での会話は思いのほか盛り上がるものです。

教科書的に表現すれば、「飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為」に至ることが少なくありません。

もっと言わさせてもらえば、メイドカフェだって多様化しています。

Mっ気あるお客さんを対象にツンデレを売りにするメイド・執事サービスだって存在しますが、第三者からみればそこに「歓楽的雰囲気」(風営法2条3項)は見出し得ないと思います。

もちろん、こうしたサービスの全てが風営法の「接待」に当たるなんてことはあり得ません。

法令というのは、あらゆるケースを想定していると同時に、規制すべきでないケースを除外できるように一般的・抽象的に規定・解釈されるものだからです。

 

 

「接待」の本当の基準

 

では、結局のところ風営法の「接待」に当たるかの具体的な判断基準は存在しないのでしょうか。

もちろん、ちゃんと存在しています。

しかも、机上の空論などではない、実際の「夜の街」で生きる知恵としての本当の基準です。

それは警察が「接待」と考えるかどうかです。

もっとはっきり言えば、警察が処罰すべきと判断すると「接待」と認定されることになるということです。

・・・何だそれ!と失笑を受けてしまいそうですが、本気です。

もちろん、法令解釈の説明として行政の恣意的解釈が判断基準となるなんて説明は破綻しています。

ただ、実際の風俗営業における警察行政の運用はこれが有効な判断基準だと確信しています。

改めて今回の報道内容を確認すると「1~3年ほど前から無許可営業を続けていた」とあります。

なぜ、もっと早く取締らなかったのでしょうか?

もちろん、裏どり捜査を行っていたのかもしれませんし、真相は分かりません。

一般に風俗営業許可店に対して風営法違反責任を問うことより、許可の必要性がない一般店に対する風営法違反責任を問う方が難しいとされます。

自動車の無免許運転などと異なり、風俗営業に当たるかどうかは営業実態を事実認定しなければ判らないからです。

そもそも、風俗営業許可の必要性を認識していない一般店が風営法の義務を履行していないのは自然なことです。

さらに言えば、深夜営業などで風営法の規制を受けたくないから一般店として営業している事業者もたくさんあります。

その場合、まず営業実態から風俗営業として許可をうけるべき営業であることを証明する必要があります。

歓楽的雰囲気を醸し出す「接待」が行われていたことを立証するのが難しいことは誰にだって想像つくと思います。

机上の議論では「飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為」と説明できますが、実際の現場でこれを証明するのは簡単ではありません。

実際の警察活動では、店舗の客席配置などの客観的な状況証拠から固めていくことが少なくありませんが、今回の摘発のようにカウンター越しでのサービスとなると他の業態との区別も難しくなってきます。

そのような立証の困難性を抱えていた案件であるからこそ、1~3年の間処罰されずに来たのだとも言えます。

そして、今回いきなり警察が判断を変えたのもちゃんと理由があると思っています。

 

 

若きリーダーの決断

 

それは地方行政のトップから働きかけがあったからではないでしょうか。

今年1月末の千代田区区長選挙において小池都知事の腹心で都民ファーストの会・前都議会議員の樋口区長が若きリーダーとして誕生したことは本ブログでもお伝えしておりました。

参考【歌舞伎町キャバクラで機動隊による強制捜査】

 

カラオケ・飲食店に対する休業・時短要請に対して事業者からの反発を受け、休業命令にまで踏み切っている東京都として、基礎自治体の立場から一致団結して援護射撃してくれるのが樋口区長の存在ではないでしょうか。

これは決して、小池知事と樋口区長が一緒になって飲食店をイジメているという意味ではありません。

一定の政策を実現する上で東京都と特別区が足並みを揃えて法令違反事業者に対する取り締まりを行っているという意味です。

ちなみに樋口区長ですが、警察官僚を務め警視総監まで上りつめた樋口建史氏の長男であり、警察行政には人一倍の拘りがあることは疑いようがありません。

本ブログでもたびたび紹介してきたグローバルダイニングの長谷川耕造さんの発信をはじめ、法令違反上等と前のめりになる事業者に対して牽制を加える意味でも警察行政の今後の対応が注目を集めます。

上場企業の社長という立場にありながら、駐車違反程度で大したことないなどと毒づいて法令順守を軽んずるようなら、行政としてもこれから本当のクソ素晴らしき世界を味わせてやると言っているような気がしてなりません。

もし、行政トップからお墨付きを与えられての全面的ゴーサインが出ていたのであれば、所轄警察署としてはもう迷うことはありません。

立証の困難性があったとしても、処罰すべきとの法令違反嫌疑の店舗を摘発するだけです。

 

 

法律による行政の原則

 

もちろん、日本の警察は法律による行政の原則に縛られますので、気に食わないから処罰することは許されません。

そこで、違法営業を認定する根拠として風営法の「接待」行為に警察権力発動の法律的根拠を求めたのだと思います。

最終的な事実認定は裁判でなされますが、事実を推認させる状況証拠で摘発を行い、被疑者の逮捕・勾留に至りました。

報道では200円程度のジュースを10倍以上の3000円から7000円で販売し、ドリンクを飲み終わるまでメイドとの会話を楽しめるシステムだったとありました。

机上での法律解釈だけをしていると、こうした価格設定は風営法の「接待」の解釈とは無関係なようにも思えます。

でも、実はこうした情報こそが「接待」として風俗営業であることを推認させる状況証拠となってくるものです。

もちろん、原価の10倍とは何事だ!俺が通っている大衆居酒屋の価格設定と比べて悪質だとかといった次元の話ではありません。

そもそも、接待飲食の風俗営業では原価10倍で提供すること自体は珍しくもありませんから、利用者が納得して購入している以上は高価格設定自体が悪質とも言えません。

一方で原価10倍の対価を支払っても来店する顧客心理として、決してドリンクに対する対価として消費しているのではないということも理解頂けると思います。

摘発されたメイドカフェにおいても、原価10倍の価格はドリンク代ではなく、メイドとの会話の対価だという事を推認できるという資料だという事です。

同時にこの価格設定こそが、前述した深酒店でのマスターとの談笑と風俗営業店での談笑との法律上の扱いの違いを説明する根拠にもなります。

原価の10倍の価格でも納得して提供を受け、その多くはタイムチャージで課金されるとなると、それは単なる談笑ではなく「飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為」として「接待」に当たると推認できます。

摘発事案の報道内容と言うのは警察の発表内容に基づいて報道されています。

警察が発表する内容、発表しない内容というのはそれぞれ意味があります。

今回の価格設定はぼったくりによる処罰の必要性を伝えたいのではなく、接待の対価として支払われていたことを推認させるために発表されていたと解されます。

摘発の報道は、国民の処罰感情に共感させると同時に、警察活動が法律による行政の原則に基づいて行われていることを訴求する役割もあるからです。

薬物事案などと異なり、風俗営業事案での摘発はまったく何の前触れもなく突然訪れることは稀です。

今回、摘発を受けたメイドカフェも風営法違反での摘発は予想していなかったとしても、特措法令に基づいた休業・時短要請違反をしている認識は間違いなくあったはずです。

警察はじめ行政が処罰しようとする予兆は必ず探知できると思います。

SNSでの無責任な法令無視の煽りなどに惑わされず、しっかりとリスクコントロールしていってください。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

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