風営紳士録2.0

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風俗営業許可が「夜の街」での貴賎を分ける

怪演俳優の夏が終わる

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

9月になりました。

今年の夏もあっという間に終わってしまいましたね。

 

残念ながら、芸能人としての夏が終わってしまった方もいます。

前回の投稿で芸能人によるホステス女性への性加害告発を取り上げましたが、やはり無傷では済みませんでした。

 

個人的には、香川氏の鬼気迫る怪演ぶりは気に入ってましたが、演技なしにこんなん見せられたらもうお茶の間は厳しいですよね。

 

 

「夜の街」バトル勃発

 

なぜ芸能人のスキャンダルをしつこく取り上げるかと言うと、本件を巡って風営法の解釈も含めた興味深い議論がなされていたからです。

特にこちらの方のツイートには多くのいいねやRTがなされていました。

私もリアルタイムでツイートを拝見していましたが、削除前の「夜の仕事(社交飲食店)は賎業」なるツイートにナイトタイムエコノミーに造詣が深いと自認される専門家も賛同の引用RTをされていて少し驚きました。

もちろん性を売りにした賎業とまで言われては、銀座の現役の方だって黙っていません。

 

 

法律が考える貴賎とは

 

どんな職業を貴いものとして、どんな職業を賎しいとするかは個人の価値観の問題ですが、社交飲食店を含めて風営法ではある前提を置いています。

それは風営法が規制しなければ「善良の風俗」「清浄な風俗環境」「少年の健全な育成」に悪影響を及ぼすことになるという前提です。

本来、国民の職業選択・営業の自由(日本国憲法22条1項)は日本国憲法によって保障されています。

この経済的自由権を規制しているのが風営法ですが、なぜ規制するかの理由が法律の目的(風営法1条)に示されています。

そこでは大きく3つ、すなわち「善良の風俗」「清浄な風俗環境」「少年の健全な育成」のために規制や措置を講ずると明記されています。

華やかなドレスを纏った銀座の夜の蝶は、性を売りにする賎業にも、サービスを提供する営業職にもなり得るからこそ、風営法による許可制度が設けられていると私は考えています。

本来は禁止された営業ですが、風営法で認められた場合だけ営業できるのが社交飲食店などの風俗営業です。

法令で適法に認められた社交飲食店であれば、それは間違いなくサービス業であり、キャスト・ホステスの方々は接客営業職です。

しかも、銀座の高級クラブの営業は民間企業でいえばトップ営業です。

高級クラブであれば十万~数百万円の客単価があり、極めて利益率が良いからです。

なお、「社会に対し付加価値を提供しているのかは意見が分かれる」とありますが、会計学的意味では「付加価値」というのはあくまで損益計算の利益額でしかありません。

粗利率からすれば風俗営業、特に銀座の高級クラブは凄まじい付加価値を生み出していることになります。

居酒屋のビールと銀座のビールの値段の違いがそれを証明しています。

だからこそ、風営法による規制が必要で、許可を得た事業者だけが許される営業形態なのです。

 

 

二つのクラブの共通点

 

風営法が置いている前提は、社交飲食店だけを想定している訳ではありません。

例えば「接待」は社交飲食店としての高級クラブやキャバクラだけで問題となるように思えますが、実は違います。

今回の事件は、座る方のクラブ(社交飲食店・風営法2条1項1号)でしたが、踊る方のクラブ(特定遊興飲食店・風営法31条の22)でも同様の規制が働いています。

踊る方のクラブである特定遊興飲食店というと、音楽好き・ダンス好きが集まるように思えますが、実際はそうでもありません。

爆音の中で空気も悪く、繁忙日は満員電車のように押し込まれ、素人バーテンダーが作るカクテルをプラカップで提供されます。

ダンスフロアには人が溢れているので、踊るといってもダンス出来る空間がなく、ハウスDJがヒット曲を流すだけの店舗も少なくありません。

通常の感覚からするとおよそ快適とは思えない空間にも関わらず、なぜ人気店が存在するかと言うと、それは出会いを提供しているからです。

いわゆるナンパ箱、男女の出会いの場として商売が成り立っている店舗が少なくありません。

もちろん、気の合う仲間との出会いもありますが、やはり男女(あるいは同性同士)の出会いです。

暴露系YouTuber国会議員として有名になったガーシー語録「アテンド」というのをご存知でしょうか。

「アテンド」とは接待に近い意味ですが、ガーシー語録で用いる時は若い女性を同席させることを指します。

実はこの「アテンド」を古くから行ってきたのがナンパ箱クラブです。

VIP席に訪れた男性客のみの団体に対し、フロアにいる容姿端麗な若い女性客を連れてきて同席させるというのが、ナンパ箱クラブでのVIPマネージャーの重要な「アテンド」業務です。

なぜなら容姿端麗な若い女性客が同席すると、ボトルを多く開け、客単価が上がるからです。

ただ、実はこうした行為も厳密には風営法が規制する「接待」にあたるものになります。

「接待」するのは何もキャストやホステスさんに限定されないのです(風営法解釈運用基準第4、2「接待の主体」)

踊るクラブと座るクラブ、どちらも異性の魅力が相まって独特な高揚感から高額消費による付加価値向上につながる点は共通しています。

インバウンド観光政策の文脈でナイトタイムエコノミーや夜の経済振興を語る時、「自然観光資源は外貨獲得にならないからもっと積極的な消費喚起すべき」との主張を目にします。

ただ、そうした論旨を展開する識者の中には、こうした「夜の街」風俗営業の妖艶な性的魔力が高付加価値化につながることに鈍感な方が少なくありません。

性を売りにしてと言ってしまえばそれまでですが、「夜の街」風俗営業でこうした艶がなければそれはそれで寂しいものです。

犯罪行為や事故が発生したからといって、職業や産業への従事者が卑屈になる必要はありません。

厳しい風俗営業の許可を取得している以上、正々堂々と誇りをもって取り組んでください。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

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