風俗営業許可を左右してきた風営法改正の歴史
平成18年改正
『風営法』の一部改正されたもの(以下、改正法)が平成 18 年の5月1日から施行されました。それと連動して「歓楽的雰囲気を過度に助長する風俗案内の防止に関する条例」という条例が、大阪府では同年2月1日から施行され、東京都でも同年6月1日から施行されました。
「この改正は、一体どんな改正なのかしら?」と思われるでしょうが、ごく一般の風俗営業者(マージャン店やパチンコ店、バー、クラブ、ゲームセンターなど)には全く関係のない改正法なので、心配はいりません。
その内容は「性風俗の営業」に関するもので、特に「デリバリーヘルス」と呼ばれている業種(法的には「派遣型ファッションヘルス営業」)の規制が主な目的になっています。
「デリバリーヘルスって、なあに?」という方もあるかと思いますが、それは、店舗を持たないでホテルなどに女性を派遣し、性的マッサージをする業務のことです。
「えっ、そんなのが認められているの?」と驚く方もいるでしょうが、それが認められているんですねえ。それも摩訶不思議なことに「届出制」ということで、マージャン店やバーのような普通の風俗営業店の「許可」よりも、はるかに簡単な手続きで営業が開始できます。
隣に小学校や病院があろうとも営業できます。届け出れば、10 日後には営業を開始していいのです。
「えっ、えっ、えーっ???」ですね。
マージャン店など普通の風俗営業者は、新規に業務を開始する場合、近くに学校や病院があれば許可が下りない場合がありますし、申請してから「55 日以内」(東京都での標準処理期間)という長い時間、許可を待つことになります。
しかも、申請者に5年以内の犯罪歴のようなものがあれば、「欠格事由」に該当して許可が下りません。
しかし、怪しい「デリ」の方は、犯罪歴など一切問われません。おかしなおかしな法律です。
そんな野放しのような性風俗営業を規制しようと改正されたのが、この改正法なのです。平成 18 年5月1日から施行されましたが、4月以前から、そちらの業界は上を下への大騒ぎでした。
平成18年改正の内容
平成 18 年5月1日から施行された『風適法』の主な改正内容は、①人身取引の防止、②性風俗関連特殊営業の規制、③集客行為(客引きなど)の規制、④少年指導員に関する規定、⑤罰則の強化――となっており、特に②の性風俗関連の規制強化が主な内容です。
『風適法』の改正に伴い「施行規則と内閣府令」も改正されましたが、その内容のほとんどが「性風俗関連営業に対する規制と届出書の新書式および届出に関する添付書類の説明」となっています。
「派遣型ファッションヘルス」、通称「デリバリーヘルス」というような「無店舗型性風俗特殊営業」については、この法改正前までは営業に関する距離制限が一切なく、小学校や病院の隣であっても届出さえすれば、届出の 10 日後から営業が開始できたのでした。
この改正では、その「デリヘル」の「受付所」(客が来て、写真などを見て女性を指名する場所)についてのみ店舗とみなし、東京でいえば「台東区千束4丁目の一部」以外は、その受付営業ができなくなったのです。
受付営業ができなくなったといっても、それは業務の全面禁止を意味するものではなく、客が直接来店しない「電話やインターネットによる申し込みや受付」に関しては、営業に対する場所的規制は今後もありません(広告規制はあります)。
また、従来からある受付所に対しては既得権を認め、その年の5月1日から3カ月間に届出をすれば既得権が確認されました。この確認のための届出は改正の大きな柱になっており、従来から営業しているすべての性風俗関連営業者が対象で、届出をしないと既得権が消滅してしまいました。
昭和 60 年の『風適法』改正以前から営業権を持っている「ソープランド、ファッションヘルス、ラブホテル、レンタルルーム、ビデオボックス、ストリップ劇場など」も、この制度に気が付かないでいて既得権が消滅しそうになったところもありました。
5月1日の施行直前(4月 24 日)の官報と警視庁のホームページに掲載されてはいるものの、消滅の憂き目にあう業者も出てしまいました。
この改正は、性風俗業者をターゲットにしたものでした。
平成27年改正の内容~ナイトタイムエコノミー元年
風適法の改正が平成 27 年 6 月 24 日に公布され、平成 28 年 6 月 23 日施行となりました。その主な改正点は①「ダンス」の風適法からの除外とそれに伴う「特定遊興飲食店営業」の新設です。その他に②法第 13 条(営業時間の制限等)において、深夜の時間を従来の「午
- 0 時~日の出までの時間」から「午前 0 時~午前6時までの時間」に変更し、地域限定等はあるものの、「午前 0 時以降、都道府県条例で定める時まで営業ができること」になりました。この②の部分は非常に重要な部分です。条例改正によって、風俗営業の深夜の時間帯の営業が出てきたということです。即ち、バーもクラブも、ホストクラブも麻雀店も深夜営業の可能性が出てきたということです。
ところがです。当然といえば当然なのですが、今回の法改正に熱心だったのはダンス系の団体のみで、バーをはじめとした社交飲食店や遊技関係の団体は殆ど関心を示していませんでした。その結果、条例による時間延長の部分への働きが無いままで条例の改正が進んでしまいました。
改正東京都条例では、営業時間の見直しについて「条例施行規則において、規則で定める時は現行どおり、午前1時まで」となってしまい、深夜における営業時間の延長は行われないことになってしまいました。
深夜の営業については、ダンス団体が主張していた、芸術的、文化的、健全且つインバウンドによる経済効果を強調した結果、深夜に営業のできる初めての許可「特定遊興飲食店営業」が創設されることになりました。これはこれで進歩には違いないのですが、ことさら健全性を打ち出したが為、「風俗営業者」は深夜に営業を行う場合、騒音等による営業所周辺への迷惑防止措置や苦情処理に関する帳簿の備え付け等が義務付けられることになりました。それはそれとして、深夜の概念が「~日の出まで」から「~午前 6 時まで」になり、且つ都条例では、午前 5 時までの営業制限も行われることになりました。
ホストクラブや朝キャバといった、日の出から営業開始というゲリラ的営業作戦を考え出した営業者にとっては、午前 6 時からの営業開始は大きな痛手になることと思います。午前 0 時若しくは午前 1 時から日の出までの時間帯が風俗営業者にとっては営業してはいけない時間帯だったのですが、それを午前 6 時まで営業してはいけない時間に延長したのが今回の法改正の狙いの一つだったのかもしれませんね。
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