風営紳士録2.0

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文化性があれば風俗営業許可は不要か?

罪を憎んで作品を憎まず

こんにちは

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です

コカインを使用した容疑で俳優・ミュージシャンのピエール瀧さんが逮捕されました

 

これに伴い、ピエール瀧さんが出演した映画・音楽作品の自粛がされると同時に作品には罪はないのではないか、との議論が巻き起こっています

 

4月5日に公開を予定していた映画『麻雀放浪記2020』はピエール瀧さんの出演シーンも差し替えずに公開することを発表しました

作品が風俗営業許可店であるマージャン店を舞台していることから、今回の事件を通じて風俗営業許可を考えてみます

 

世論の風向きを読む

 

まずは『麻雀放浪記2020』の公式サイトの発表内容は以下の通りです

「この度、ピエール瀧容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたことは誠に遺憾であります。

『麻雀放浪記2020』の公開にあたりましては社会的影響が計り知れないことも重々承知しております。

しかしながら映画の上映は有料かつ鑑賞の意思を持ったお客様が来場し鑑賞するメディアであり、テレビ放映またはCMなどのメディアとは性質が異なります。

このことを鑑み、『麻雀放浪記2020』製作委員会として対応について協議を重ねました。

その結果、劇場につきましては配給を担当する東映の判断でノーカットで公開する結論に至りました。」2019年3月20日現在

 

本音を言ってしまうと、もう公開日までに時間的余裕がなく、公開中止とする場合の経済的損失を考えると公開せざる得ない状況だったのかもしれません

もっとも事件報道後、各界識者から作品に対する自粛ムードをたしなめる世論が巻き起こったことも今回の判断を後押ししたのかもしれません

 

特に坂本龍一さんが自身のツイッターで見解を述べたことは影響が大きかったようです

先にあげた『麻雀放浪記2020』でも、このような世論を受けてゴーサインを出したのかもしれません

というのも、コメントの最後に「2019年3月20現在」と断っており、場合によっては判断を変えることも匂わせているからです(苦笑)

 

なお、原作である『麻雀放浪記』(阿佐田哲也)は戦後復興期のドヤ街を舞台にして賭博・覚せい剤などの描写も多用される無頼作品です

 

そういった文脈で考えると、今回のピエール瀧さんの配役や事件発生は映画作品の認知度向上にも役立ったとも言えるかもしれません

 

法律と倫理の違い

 

もっとも、ピエール瀧さんの作品を自粛するかしないかの判断は法律上の問題ではなく、あくまで倫理上の問題です

その際、作品の文化的価値の高さから、独自の判断をすることは十分合理性があると思います

ただ、一方で法律上の問題の場合、文化的価値を持ち込むことは筋違いだと言えます

実は坂本龍一さんは風営法改正時にも同様にメッセージを発信していました

平成27年6月の風営法改正のきっかけとなったナイトクラブでの時間外営業規制の際、「ダンスは文化だ!」と主張することで「踊れない国・日本」という文化後進国のイメージ形成が識者から行われました

もちろん、法改正の前提としてさまざまな意見が交わされることや社会環境変化を捉えようとすること自体は結構なのですが、一方で当時の風俗営業許可店にも「文化性のあるものだから法律で規制するのはおかしい!」と違反行為を行う事業者が出て来てしまったのも事実です

 

いわゆる音箱と呼ばれる小さなクラブなどは、クラブカルチャーを発信する空間なので文化貢献に寄与するものだから規制に服さなくても良いという風潮がありました

時間外営業はもちろん、禁止区域で営業しているクラブもありました

法律家でありながら、禁止区域での無許可営業を容認するよなアドバイスを行っていた輩までいました

 

風営法のダンス規制の際、必ず主張されたのがダンス文化論です

風営法に違反していたって文化的な価値があるから良いではないか、という理屈です

文化的な価値が理解できない頭の古臭い連中が杓子定規に規制しているのが風営法ということでしょう

 

風営法の許可・不許可の基準

 

ただ、はっきりと言えることは「風俗営業許可と文化性はまったく関係がない」ということです

風営法・規則、解釈運用基準などどれを見ても、「文化性の高低」といった記載はありません

そもそもダンスをはじめ表現の自由と呼ばれる精神的自由権は最大限保障されるべきであり、警察行政が「これは文化的な価値があるから許可する・しない」なんて恣意的な判断をすることが許されません

 

作品公開を自粛するしないはあくまで倫理上の問題として文化性が影響しますが、警察行政が規制するしないは法律上の問題で文化性があるがなかろうが全く関係ないのです

 

風営法の許可・不許可は国家権力が実力行使するかどうかという圧倒的な効果が伴います

だからこそ国家権力が実力行使することが認められるには法律上の基準が必要なのです

 

「特定遊興飲食店」と名称が変わりましたが、警察(公安)は現在でも営業許可に際して文化性の有無で判断していません

風営法改正の時は、文化としてのダンスが強調されていましたが、実際の改正風営法の運用は文化というあいまいな基準で許可判断されることはないのです

 

たしかに世論を喚起するには文化論も良いと思いますが、警察行政を動かして風俗営業許可を確実に取得するには彼らの論理でしっかりと説明していくことが必要です

 

どんなに素晴らしい才能の持ち主で素晴らしいサービスを開発し、情熱をもってビジネスに取り組む方であっても薬物中毒者であれば風俗営業許可は下りません

 

風営法に記載されている人的欠格事由という項目がそれにあたります

逆に言うと、どんなにくだらない思想をもっていようが、文化的価値がまったくない店舗出店を予定しようが、営業許可の判断には一切影響はないのです

 

また、禁止地区や営業実態が法令に違反していれば許可は下りません

莫大な製作費をかけたから世論の風向きを見ながら映画公開しちゃおう!というのとは訳が違います

 

パチンコ店など莫大な設備投資を行っていても営業許可が下りない時は絶対に下りません

 

このような悲劇を回避するため、しっかりと専門家に相談することをお勧めします

ピエール瀧さんのように莫大な賠償金を抱えることがないよう、しっかりと計画的に取り組んで行ってください

ライブで綿菓子(スノー)を振る舞うピエール瀧さん…

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