名称公表より風俗営業を休止に追い込むもの
家賃猶予の法整備
皆さん、こんにちは!
東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。
東京都産業労働局より感染拡大防止協力金申請の開始がアナウンスされました。
オンライン申請で行えるとのことで【東京都感染拡大防止協力金】から確認してください。
今回の協力金の使途として家賃に充てたいという声が多く聞かれているそうです。
緊急事態宣言発令後の営業自粛要請に伴い、収入減となっている風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業では家賃負担が重くのしかかってきています。
そのような中で家賃負担猶予のため、事業者団体が政府への支援・法整備の呼びかけを行いました。
「外食産業の声」委員会
「家賃支払いモラトリアム法」策定を訴える記者会見を4/21に開催
フードスタジアムHPより
・不動産オーナーにテナントとの話合いに応じることを義務化
・日本全体が厳しい今、“痛みの分かち合い精神”で減免交渉に応じることを義務化
・不動産オーナーの都合で減免や支払い猶予が難しい場合は、政府系金融機関が代わって家賃を振り込む制度の策定。まずは金融機関が家賃を肩代わりし、テナントは期間を置いてその返済を行うというもの。なお、その制度を申請する際は不動産オーナーとテナントとの合同で行うこと。金融機関はオーナーとテナントの両方から決算書見て公平なジャッジを行い、テナント側が不利にならないよう配慮する
こうした民間事業者の声と同時に与党・自民党内からも家賃補助の法整備を検討することが表明されました。
自民党・岸田政調会長が「テナント(店子)の救済が目的」であることを強調しているように、公金で家賃を肩代わりすることは飲食店事業者であるテナント(店子)のみならず、貸主である家主・ビルオーナー側にとってもメリットがある訳です。
本来は小規模資本の零細飲食店テナントにとっては歓迎すべき動きですが、今回のロビー活動を行った外食産業の事業者団体がSNS上でかなり派手に振舞っていた方々なので、反発感情を招いている側面もあるようです。
損失は分かち合いたいが利益は独り占めしたいテナントの皆さん!
— Yohei Shiraishi (@yh_shiraishi) April 21, 2020
大家は慈善事業やっとんと違うんや
従業員の給料も賞与も払わなアカンのや! pic.twitter.com/i7WXC8d1SM— Yohei Shiraishi (@yh_shiraishi) April 21, 2020
『目立つところで商売をしているからみんな「おお、苦しいのか」と感じるのであって、実際には生産者や流通や卸やその他業界も等しく苦しく、じきに不動産業界も賃料低迷や地価下落が起きるだろう』
松田公太「コロナで客が来ないから」外食産業の家賃棒引き法の無法地帯 https://t.co/mZ7SKp3pjv
— どエンド君 (@mikumo_hk) April 23, 2020
家賃免除になったらこんな感じでパリピしそう(´・_・`) https://t.co/53f1tEgShv
— ボヴ (@cornwallcapital) April 22, 2020
業界の端くれとしてもあの物言いは共感できないし、赤字でも契約なんで当然払う覚悟の事業者も多いのです。
あれで業界の代表面されるのには違和感しかないです。
— 飲食店の裏方 (@inshoku10) April 23, 2020
稼げる時は稼げるだけ稼ぎ、巨利を謳歌するが、いざ不景気となれば分かち合いの精神とか言いながら他人の利益をむしり取りに走る。それを大衆の利益の美名で糊塗できるのだから、醜悪を通り越して見事である。
— 税理士 和田晃輔/不動産オーナー専門 (@wadazeirishi) April 21, 2020
交渉で伝えるべきこと
賃貸借契約では、敷金・保証金を数か月分入れているのが通常ですので、貸主側としては賃料不払いに対しては敷金・保証金と相殺することで減収は防げることになるのが建前です。
ただ、賃料の不払いの債務不履行で明け渡し請求を行うには1ヶ月分での不履行では足らず、通常は数か月の不履行が重なってから実行されます。
風俗営業・飲食店舗の場合であれば、3ヶ月もしくは6ヶ月で強制退去となるのが相場ではないでしょうか。
したがって、強制退去発動となる3ヶ月以内にこの法案整備が整うようスピードが求められてきます。
また、外食産業の事業者団体の要求に盛り込まれている「痛みの分かち合いの精神」として貸主側に減免交渉に応じることを義務化させる点ですが、これは貸主側も窮状に陥っている場合が多いことも加味しなければなりません。
賃貸物件の返済ローンが毎月発生している場合は、貸主も毎月の返済に追われている状況にある訳です。
家賃減免交渉に臨むにあたってさらに重要なことは「本当に店舗売上は戻るのか」という本質的な部分です。
外食産業の事業者団体の言い分としては、不可抗力の窮状なので家賃で再起のチャンスを潰さないで欲しいということですが、これは緊急事態宣言・措置に基づく営業・外出自粛要請が解かれることが前提になっていると思います。
もっと言えば、営業・外出自粛要請が解かれるだけでなく、実際に店舗に訪れる客足が復活しなければなりません。
ただ、コロナウイルスが完全に収束しない限り客足が完全に戻ることは期待薄ですし、5月以降も緊急事態宣言が継続される可能性も考えておかなければなりません。
この点を抜きにして、貸主側に家賃減免交渉に応じる義務を認めさせたところで、お互いの意見が平行線をたどるだけのように思います。
家賃減免をしたところで、客足・売上が戻らない店舗にテナント(店子)として入ってもらい続けても共倒れになるだけです。
貸主側にしたって、この状況から新しいテナント(店子)を同水準の家賃で見つけるのは至難の業なので、できれば継続的に賃貸借契約を伸ばしていきたいと考えているはずです。
賃貸事業での最大のリスクは空室リスクであり、今回のコロナショックは飲食業界だけでなく、不動産賃貸業界とて例外ではなく、貸主側も被害者なのです。
その意味でも、政府・専門家会議が判断する緊急事態宣言の延期有無は、風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業の家賃問題を直接左右する重要な判断になるはずです。
仮に5月で緊急事態宣言が解除されれば、家賃交渉に対しても前向きな取り組みが期待できると思います。
逆に、5月以降も緊急事態宣言が延長となると、家賃交渉は厳しくなると思います。
さらに、緊急事態宣言発令時のように、政府・専門家会議が段階的な判断を示すとなると「3密店舗だけ自粛継続」となる可能性もあると思います。
勝負の分かれ目・天王山はGWの緊急事態宣言継続の判断です。
5月以降の緊急事態宣言全面解除こそが、風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業の事業者の命運を握っている状況です。
貸主・家主との家賃減免交渉においても、情に訴えるだけでなく、緊急事態宣言が解除された暁にはしっかりと客足が戻り、売上を出せる店舗であることをしっかりと伝えることが大切です。
歌舞伎町の現状
では、GWの天下分け目の戦いに向け、不夜城・歌舞伎町での休止要請施設の現状はどうなっているでしょうか。
新宿最大級の「ナイトクラブ」「ダンスホール」であるWARPは休止要請を受け入れ、5月の審判を待っています。
同じく休止要請を受けた施設の「カラオケボックス」大手のパセラも休止しています。
事業者により対応が分かれている施設が「個室ビデオ店」です。
宝島24は休止、金太郎花太郎は継続しています。
「ネットカフェ」のマンボーも継続しています。
森下グループの対応
「個室ビデオ」の金太郎花太郎と「ネットカフェ」のマンボーの経営母体は同じ事業者です。
風俗王と称される森下景一氏率いる森下グループが運営しており、歌舞伎町の観光名所と化しているロボットレストランも手掛けています。
実は、このロボットレストランは「個室ビデオ」や「ネットカフェ」と異なり営業休止中となっています。
休止の張り紙には「政府に要請された方針に従い」とありますが、森下グループについてネット検索してもらえば直ぐに分かる通り、過去には風営法違反・消防法違反なども起こしていて、行政からの要請だけで直ぐに動くような事業者ではありません。
もちろん、「個室ビデオ」や「ネットカフェ」は、住所不定のネット難民向けの社会貢献としての理念に根差したものもあると思います。
ただ、それ以上に森下グループ内の店舗業態で対応を分けた最大の要因は「お客さんが来てくれるかどうか」だと思います。
お客さん、すなわち需要があれば営業継続し、需要がなければ営業休止する、という商売の根源的な行動規範で対応を分けていると思います。
ご承知のようにロボットレストランの顧客層はインバウンドの訪日外国人観光客が多く占めていました。
外国人の入国制限がされている現在、ロボットレストランを開けているメリットは殆どありません。
逆に、「個室ビデオ」や「ネットカフェ」の利用者は、感染拡大よりも自身のその日の宿泊先を憂慮する客層です。
なおかつ、競合店が営業休止していれば、残存者利益としても商圏内の顧客を独占できます。
「生きるため」「家賃の支払いのため」営業を継続していると言われていますが、大前提として「店を開けていれば数は少なくても必ずお客さんが来る商売」という需要と供給の大原則が現在の歌舞伎町を支配しているのです。
休業要請の強化
森下グループをはじめ、休業要請に従わない事業者に対し要請を強化すべきとの声が上がっています。
特に、パチンコ店など対象業種が明記された事業者に対しては、任意対応としての要請から、使用制限・停止などの要請・指示・施設名の公表にも踏み込むべきとの意見です(措置法45条)。
ただ、事業者名を公表されて営業休止するくらいなら、最初から休止要請に従っているのではないでしょうか。
森下グループの例は極端かもしれませんが、法令で禁じられてもギリギリのグレーゾーンを攻略する商魂の事業者が存在するのも風俗営業の実態です。
休止に追い込むもの
彼らは一つの絶対的な行動規範があります。
それは需要があるかどうかです。需要が無くなれば頼まれなくても休止します。
需要がありさえすれば、それを提供するのが顧客価値であり、企業価値につながるという思想で動いているからです。
そもそもこれはビジネスの基本であって、業種業態や洋の東西を問いません。
かつて「20世紀は石油の世紀」と呼ばれるほど、原油は資源として認識され、原油産出国は優位性を誇っていました。
ところが、減産合意に失敗し、需給バランスが崩れたことから、昨日4月21日には史上初めて原油先物(5月限)がマイナス価格となったのです。
商品先物ではありますが、単純に表現すると「原油なんかタダでも要らない、原油を売りたければ金もよこせ!」といったところです。
需要がなければ容赦なくたたき売られますし、需要があれば価格はどんどん上がるのが経済原則です。
国際的な商品先物市場を支配した経済原則が歌舞伎町でも支配しているということでしょう。
風俗営業に話を戻しますと、同じ風俗営業の括りでも需要の戻りを期待できるのは性風俗であると言われています。
複数の事業を経営されている風俗営業事業者からも、デリヘルだけは全く衰えておらず、キャバクラ休業などで収入が途絶えたキャストが性風俗やパパ活に流れているとの話を伺いました。
メディアやSNSでの識者はオンラインキャバクラなどへのビジネスモデル転換を模索していますが、アニマルスピリット溢れる歌舞伎町のナイトビジネスの現場では、需要が途絶えたものから需要が残るところへ労働資本の移動がスピーディかつダイレクトに行われています。
GW後にどのような判断が下されようが、生き残る者は生き残っていくということです。
もちろん、撤退することも立派な戦略の一つで、勇気ある撤退が次なる未来を切り拓くチャンスを掴むことだって十分にあります。
絶対にやってはいけないのが、国や行政、他人のせいだと批判しながら、被害者意識だけ強くして自分を変えようとしないこと。
必ず突破口はあるはずです。
やたべ行政書士事務所は、風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!
それでは、また!
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