憲法記念日に考える夜の街の経済的自由
禁酒で街の灯が絶え
皆さん、こんにちは!
東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。
5月を迎えました。
昨年の新型コロナウイルスによる最初の緊急事態宣言から丸一年が過ぎていますが、日本ではN501Y変異株による感染拡大が一向に収まりません。
ゴールデンウィークでの集中的対策を狙い、東京・大阪・京都・兵庫の4都府県では、3度目の緊急事態宣言が発出されています。
これに伴い、対象地域の飲食店では酒類提供の停止が要請される事態に至っています。
お酒を伴う飲食の機会は感染リスクが高いとされています。
飲食店には酒類、カラオケの提供停止を要請しています。
皆さまには、路上なども含めお酒を飲むことが感染につながることのないよう、十分な注意をお願いします。
詳細はこちら:https://t.co/oWIkoOucjc— 新型コロナウイルス感染症対策推進室(内閣官房) (@Kanboukansen) April 30, 2021
東京都では緊急事態宣言に基づいて緊急事態措置が実施され、徹底した感染対策強化が呼びかけられています。
【#小池知事メッセージ No.85】
大人数での食事やお酒は感染のリスクが高くなります。
屋外でも感染のリスクがあります。
路上や公園などに集まってお酒を飲むことはやめてください。#新型コロナ pic.twitter.com/dWFMlLWuuC— 東京都 新型コロナウイルス関連情報 (@tocho_covid19) April 30, 2021
【お知らせ】4月27日(火)、緊急事態措置期間中は、飲食店等の皆様に、お酒類の提供をしないようお願いしておりますが、酒類の提供とは、お酒の場の提供も含みますので、お酒の持ち込みも止めていただくよう、お願いいたします。
— 東京都防災 (@tokyo_bousai) April 26, 2021
とりわけ、弊所やたべ行政書士事務所が普段支援させて頂いているような事業者の皆さんに対しては、特措法45条2項に基づく【休業要請】が出されています。
内容:休業要請
目的:国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため
対象:酒類又はカラオケ設備を提供する飲食店及び遊興施設
期間:令和3年4月25日-令和3年5月11日24時まで
備考:酒類又はカラオケ設備の提供を停止すれば20時までの時短要請に軽減
加えて、ネオン・看板などの20時消灯も呼びかけられたことで、戦時下の灯火管制さながらに【時短要請】【休業要請】違反店舗を炙り出すかのような施策も打ち出されています。
その証拠に東京都としては、都の方針に全面的に協力した事業者に対してしか協力金を支払わないという強い姿勢で臨んでいます。
「まん延防止」要請を聞かなかった行為は許容できないが、
より強い策として宣言を求めた以上、この仕切りを変えないと、特に東京はカオスになる。
「酒類の提供をやめても、4月12日から時短要請に応じていたお店でなければ協力金が出ない」東京都のコロナ対策に都議が疑問https://t.co/Dj6x28C1rC
— 川松真一朗【墨田区選出・都議会議員】 (@kawamatsushin16) April 28, 2021
さすがに事業者の皆さんは厳しい状況になっていると思慮します。
言葉で頑張れ!なんて言うのは簡単ですが、八方ふさがりな状況に陥っている事業者も少なくないのではないでしょうか。
本当に切羽詰った状況の方が悠長にブログを読んでいるとも思えませんが、それでも敢えてそうした事業者を想定して発信させて貰います。
禁酒で街の灯が絶えども、決して希望の灯を消してしまってはダメです!
コロナ禍で蘇った灯
本日5月3日は憲法記念日です。
そもそも、憲法とは国民の権利・自由を国家権力から守るためにあるものと説明されています(日本弁護士連合会「憲法って、何だろう?」)
酒類提供やカラオケなど飲食店の営業を制約するのが法令ならば、そうした法令を発する国家権力を制約して国民を守るのが憲法です。
以前、時短命令を受けた飲食店によるコロナ特措法違憲訴訟をご紹介しました。
ちょうど先週末30日に、原告であるグローバルダイニング社が2021年12月期の第1四半期決算短信を開示していました。
・・・いやー、これは誰だって営業を止められないような絶好調ですね!
決して皮肉で言っているのではありません。
赤字続きだった外食産業の雄が、コロナ禍のおかげで見事に復活を果たしつつあるのですから。
もちろん、時短要請を無視して営業したことで、要請を守っていた周辺店舗の需要を独り占めできたこともあるでしょうが、そうした売上の伸び以上に利益体質が大幅に改善されてきたのが目を引きます。
東京都による自粛要請をはじめ、コロナ禍による外的変化や脅威が従業員やスタッフの団結力につながり、結果として無駄肉をそぎ落とした筋肉質の財務体質に変わりつつあるようにも見受けられます。
経営者としては、この1ー3月の店舗での雰囲気・勢いを絶対に失いたくないはずです。
客商売をされている事業者の皆さんには釈迦に説法でしょうが、飲食店というのは生モノです。
従業員はもちろん、お客さんにも勢い・流れというものがあり、放っておけば腐ってしまいます。
1ヵ月店舗を休んでしまえば、全く同じサービスを提供しても勢い・流れというのは劣化してしまい、客離れしてしまうものです。
こうした現場の活気・空気感も含めた経済的利益こそが、飲食サービス事業者がもっとも大切にするものではないでしょうか。
コロナ禍による給付金・協力金算定にも、事業者の逸失利益に対する損失補償の考えが少しずつ反映されつつあります。
ただ、グローバルダイニング社のように直近までの経営成績が芳しくない事業者にとっては、直近の振るわない業績で算定される金額よりも、勢いに乗っている今の売上を追い続けた方が潤うケースも発生し得ます。
外食産業はじめ事業者みんなのために立ち上がってくれたのか?との質問に対し、長谷川耕造さんは「僕はそんな天使じゃありません。」と応えていらっしゃいました。
憲法に保障される権利をよりどころに、科学的に、民主的に、せめても議論を尽くそう。配慮を重ねて押し黙るより、声を上げよう。長期的により良い道を進むにはそれしかない。
この訴訟はそう告げて、私たち一人ひとりを鼓舞している。#コロナ特措法違憲訴訟 #CALL4https://t.co/c5uJx3ZVaB
— CALL4(コールフォー)_社会課題の解決を目指す“公共訴訟”プラットフォーム (@CALL4_Jp) May 1, 2021
もしかしたら、長谷川耕造さんだって店舗で閑古鳥が鳴いているような状況だったら、ここまでのアクションは取れなかったのかも知れません。
経営者にとって事業の好不調は自らの自信に直結します。
皮肉にも、コロナ禍によって蘇った事業への自信に加え、スタッフのみんなが一致団結してきた現場の勢い、復活の灯を絶やしたくないとの想いがあったからこそ、訴訟にまで踏み切ったのかなと個人的に感じました。
憲法上の経済的自由として認められている「職業選択の自由」(日本国憲法22条1項)。
経済的活動としての営業の自由も「職現選択の自由」を通じて認められているとされています。
人が自らの能力発揮の場として職業を選択し、遂行し続けるという自己実現の意味合いも含んでいるものだとすれば、コロナ禍の需要で蘇ったグローバルダイニング社はまさに経済的自由を守ろうと戦っているのでしょう。
不要不急と必要緊急
もっとも、一連のコロナ禍に対する行政対応に声を上げている方々は、経済的自由への侵害としてでだけでなく、精神的自由への侵害にこそ焦点を当てようとしているようにも感じます。
どの産業でも起こりがちな事例だと思いますので紹介させてください。
【都内4寄席休業へ 協力金は拒否】https://t.co/D9ilZ4YS2N
25日に発令された緊急事態宣言後も興行を行ってきた東京都内の4寄席が5月1日から11日まで休業することを決断。休業要請を受けると都から1日2万円の協力金を支給されるが「お金が欲しいから休むんじゃない」(関係者)と拒否したという。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) April 28, 2021
「お金が欲しいから休むんじゃない」
・・・前述の通り、全面的に協力していない以上、初めから協力金は貰えません。
寄席が休業要請の対象になった際、落語協会らの説明は「大衆娯楽である寄席は社会生活の維持に必要なもの」というものでした。
行政との話し合いを行った結果、休業を受け入れたとのことですが、結果的に受け入れるのであれば精神論など持ち出さない方が粋だったのではないかと正直思いました。
もっとも、落語協会の寄席に対する気概は、まさに憲法上保障されたの職業遂行としての経済的自由を追求しているのだなとも思いました。
言うなれば、人々の社会生活の維持に必要な精神的側面をもった経済的自由というところでしょう。
ただ、こうした精神論や文化論というのは当事者が思うほどは世間に共感が生まれず、温度差が生じてしまうことがありがちです。
酒類提供・カラオケも、寄席も、社会生活の維持に必要な精神的・文化的価値があろうがなかろうが規制しなければならないと判断されたのです。
判断された理由は、飛沫感染の恐れがあるというだけです。
せめて、規制当局に反論するなら「飛沫感染の恐れがない」ことを主張すべきです。
風営法改正時の「ダンスは文化だ」論争でもそうでしたが、自らを「文化性が高い」「社会生活の維持に必要」と自称する産業者ほど胡散臭く見えるものはありません。
胡散臭かろうが、高尚そうにみえようが、一切関係なく規制してくるのが国家権力です。
にもかかわらず、制約を受ける当事者は熱くなって一生懸命精神論を展開しがちです。
特定産業・職業に対する「不要不急」論に対しても同様です。
「小池百合子なんかに不要不急と決めつけられてたまるか!」と熱くなる気持ちも分からなくはないですが、本音の部分では誰もが判っていると思います。
医療・警察・消防などの「国民生活の安全」に直結する行政サービスは、誰がなんと言おうが「必要緊急」なエッセンシャルサービスで間違いありません。
もちろん、改善が急務のワクチン接種も「必要緊急」なエッセンシャルサービスでしょう。
それに準ずるものとして、電力・ガス・水道などのインフラサービスがありますが、これらに対して一般の民間企業の提供する商品・サービスのほとんどは「不要不急」と言ってしまえばそれまでです。
我らが行政書士サービスなど、テクノロジーが極限まで最適化されれば最も不要となるサービスだと断言出来ます。
もっとも、私も含めて「不要不急」産業で生計を立てている場合に「不要不急」産業自体から収入が途絶えることは別です。
どんなに「不要不急」として括られる産業であったとしても、その産業従事者の生活資金や運転資金は常に「必要緊急」だからです。
そもそも飲食店は日銭商売です。要請を守らない店も”支給が遅い”のが一番の理由だと思われます。背に腹変えられないのだと思います。他人が死のうが何だろうが自分が潰れますから。そういう事です。 https://t.co/zMpLdi52iz
— 大谷秀政 (@otani_ldk) April 29, 2021
街の灯を照らすもの
今回の酒類提供・カラオケへの休業要請に対して、京都大学の憲法学者がこのような問題提議を行っていました。
曽我部教授のコメントが弁護士ドットコムニュースに転載されました
→まん延防止で酒類提供停止「告示改正は違法の疑いがある」京大・曽我部教授https://t.co/KnUS0ys5rN— コロナ禍検証プロジェクト (@CoronaKaKensyo) May 1, 2021
この主張の前提として以下のような価値判断が存在します。
「カラオケ店でカラオケ装置を使用禁止とすることは事実上の営業停止である」
「居酒屋で酒類提供禁止をすることは事実上の営業停止である」
酒類・カラオケ提供禁止だけで「事実上の営業停止」を認定して貰えるなら、「夜の街」風俗営業ではこの1年ずっと営業停止を求め続けられていることになります。
ナイトクラブ・ディスコなどの特定遊興飲食店が20時閉店で営業できると思いますか?
2軒目が前提である「深夜」酒類提供飲食店が20時閉店で営業できると思いますか?
今さら「事実上の営業停止」なんて認めだしたら、「夜の街」商売に対する営業時間規制自体が成立しなくなると思います。
もちろん、風俗営業業種に限らず、事実上の営業停止を主張したい産業は山ほど出てくるでしょう。
告示改正手続きの瑕疵をどうこう言う以前に、「事実上の営業停止」の認定をもっと説得力ある形で行って頂きたいと思います。
ワクチン接種では諸外国に後れをとってしまった日本ですが、外出・飲食に対する諸外国の厳しい規制に比較して緩やかな規制で済んで来ました。
日本の感染者数の相対的な少なさが幸いしていた為でしょうが、それも国民一人一人の感染予防に向けた取り組みがあったからだと思います。
公衆衛生に対する日本国民の高い意識に自信をもって、何としてもコロナ克服に向けて取り組みましょう。
コロナ後の世界で街の灯を照らすのは風俗営業はじめ飲食・娯楽サービス業の皆さんのファンクとソウルです!
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“Dynamite” BTS COSMOPOLITANより転載
’Cause I, I, I’m in the stars tonight
So watch me bring the fire and set the night alight (hey)
今夜、僕は星のなかにいるから
火花で夜を明るく照らすのを見ていて
Shining through the city with a little funk and soul
So Imma light it up like dynamite, whoa
ファンクとソウルでこの街を照らすよ
ダイナマイトみたいに輝かせるから
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やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!
それでは、また!
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