風営紳士録2.0

ナイトタイムエコノミーを中心に、サービス現場のトレンド分析から警察の取締りや法令改正情報まで、風俗営業の最新情報を発信中です!

東京都「夜の街」への時短命令と戦う心構え

緊急事態宣言解除

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

菅総理が3/21の延長期限をもって緊急事態宣言の解除を表明しました。

同時に解除後のリバウンドを防ぐための対策として5本柱が示され、その筆頭として対策の中心である飲食を通じた感染防止が挙げられていました。

総理会見の質疑にもありましたが、感染再拡大を防ぐための広報活動、特に若い世代への伝達手段としてツイッターやYoutubeといったSNSを積極活用した広報をこれから展開するとのことです。

 

 

東京都27施設に命令

 

さて、そのSNSでは宣言解除以上にこちらのニュースが話題となっていました。

国による緊急事態宣言下において、都道府県知事は改正特措法45条に基づいて、(飲食店店舗)施設の使用制限や停止などの「要請」「命令」ができるのはご存知の通り。

既に改正特措法45条2項に基づき東京都内の施設に対して時短営業の「要請」がなされていました。

3/17時点で菅総理から緊急事態宣言解除が示されていましたが、宣言終了4日を前に東京都は全国初の改正特措法による「命令」が発令されました。

これは国の緊急事態宣言などの「お願い」などと異なり、国民に対して法律上の義務を発生させる「行政行為」であって、講学上は法律行為的行政行為の「命令的行為」と位置付けられる正真正銘の「命令」です。

法的義務を伴いますから、違反すれば秩序罰としての過料が科される可能性もあります。

この報道に対し、SNSで流れていた意見には、東京都の書面による使用制限の事前通知や弁明書の提出など、露骨に飲食店イジメているといったものを多く目にしました。

報道によれば、18日に「命令」が発令されたのは27施設ですが、その前段階である「要請」違反施設は113施設あったそうです。

あと少しで緊急事態宣言解除にも関わらず、少なからぬ世論の反発を覚悟してまで、どうして東京都は「命令」を発令したのでしょうか。

また、どうして東京都は「要請」違反施設の全てではなく、一部の27施設だけに「命令」を発令したのでしょうか。

今回はこの問題を通じて、風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス業の事業者が行政とどのようなスタンスで付き合っていくべきかを考えてみました。

 

 

法の不知より大切な事

 

皆さんは行政法という法律をご存知ですか?

「ああ、名前くらいなら知っているよ」

・・・実は行政法という法律は存在しません。

行政法というのは、「行政手続法」や「行政不服審査法」など行政に関連する法律の総称でしかないのです。

もちろん行政法の細かい知識など知らなくて当然で、単なる知識としての法律名や条文を知らなくたって何も問題はありません。

ただ、法律や制度には必ず存在理由や趣旨があるもので、その本質を理解しているかどうかこそが大切な事だと私は考えています。

もっと身近で分かりやすい例を挙げましょう。

皆さんは東京都禁煙条例という条例をご存知ですか?

「ああ、お店でタバコ吸えなくなったアレね」

はい、昨年2020年4月から施行されているアレですが、「東京都禁煙条例」というのは存在しません。

存在するのは東京都受動喫煙防止条例です。

もちろん、ここでも条例名の細かい違いを指摘したくて例示した訳ではありません。

「禁煙条例」と呼ぶとき、20歳未満の飲酒が禁止されているのと同じ感覚で、喫煙者の健康被害への対策として行政が規制しているように感じられないでしょうか。

青少年の健全な育成を目指す風営関連法令やギャンブル・ゲーム依存対策にも通ずるようなニュアンスです。

こうしたニュアンスからは、父権的に規制するのではなく事業者や国民の自主判断に委ねるべきという考え方も成立します。

ただ、「東京都受動喫煙防止条例」の本質は喫煙者ではなく、非喫煙者にあります。

タバコを吸っている人ではなく、タバコを吸っていない人。

タバコを吸っている人と同じ空間に居ることで、受動的にタバコの副流煙を吸わされてしまっている人の健康被害を防止することが本丸です。

飲食店店内での喫煙規制は行き過ぎと批判される人もいますが、そもそもなぜ行政が行き過ぎた規制をするのでしょう。

それは、喫煙者自身の行為によって他人に健康被害を引き起こしているから強い規制をしている訳です。

これを法律用語では他者加害への規制と呼びます。

喫煙者が自らの意思決定でタバコを吸って、結果自分自身に健康被害が発生するのは自己加害です。

ただ、そこから転じて空間を一緒にする他人にタバコの副流煙をまき散らして健康被害を発生させると他者加害となります。

他者加害に関しては個人の意思決定や趣味嗜好への規制が厳しく行われるのはある意味当然であるとも言えます。

実はこの自己加害と他者加害の関係と同じ構造が東京都による改正特措法の「命令」には存在していると私は思っています。

 

 

持論・東京都の本音

 

今回、「命令」が発令された27施設の殆どがグローバルダイニングの店舗です。

グローバルダイニングといえば外食産業で知らない人はいないという存在で、社名は知らなくとも映画『君の名は。』で舞台となったラ・ボエムやブッシュ元大統領と小泉元総理が会食した権八など、その店舗ブランドは確固たる地位を築いています。

【ラ・ボエム新宿御苑】

【権八 西麻布】

 

グローバルダイニングの長谷川耕造さんは自身のSNSでコロナ禍によるダメージと行政の対応を強く批判していました。

小池都知事からの事前通知や自らの弁明書を公開することでSNSだけでなく、マスコミからも注目された上で反抗的な態度を取っていたため、見せしめとして狙い撃ちされた、とのつぶやきがSNSで駆け巡りました。

なるほど、風俗営業の取り締まりでは良くありますから、そのような可能性が全くないとは言い切れないかもしれません。

ただ、私は全くの正反対の考えを持っています。

東京都は本当は「命令」なんて発令したくなかったのではと思っています。

なぜなら、外食関係者はじめ世論から反発を受けて嫌われては、外食産業から今後の協力を引き出しづらくなるからです。

その証拠に残りの86施設には「命令」を発令していません(3/18現在)

 

 

「命令」に至った理由

 

では、どうして東京都は27施設には「命令」を発令しなければならなかったのでしょうか。

まず第一に、「自己加害」だけでなく「他者加害」となる状態にあったから強い規制につながったと思います。

長谷川耕造さんは弁明書の中で「当社の顧客もローリスクの年代の方が大半です」としています。

タバコにしても、コロナにしても、自己加害に留まっている限り健康被害・感染しようが自己責任なので行政は厳しい規制をする必要はありません。

ただ、他者加害として他人に健康被害・感染させているなら然るべき規制が必要になってきます。

グローバルダイニングのローリスクな年代の利用者が一歩店舗から出てからが問題なのです。

はっきり言って、自己責任で勝手に自分が感染しようが依存症になろうが、行政としてもそんなことは知ったこっちゃないと思います。

家庭内感染予防の規制が事実上不可能であり、上司部下の関係や従業員などの望まない感染・受動喫煙が発生する以上は「他者加害」を防止するための厳しい規制が必要になってきます。

ここで改正特措法45条の規制目的を確認すると、「国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため」(45条3項)とあります。

決して、施設利用者・施設管理者の安全の為とは記載されていません。

また、「正当な理由なし」「弁明書の提出」などの表現が上から目線だと批判に晒されていましたが、これらも全て法律に明記されている手続き一部です。

上から目線な表現かどうかは別に、国民に対して不利益処分を行う際、告知・聴聞として正当な理由や弁明の機会が与えられなければそちらの方が大問題です。

 

 

狙い撃ちになった真因

 

もっとも、他者加害だけが理由だと、どうして27施設に対してだけ「命令」が発令されたのかは説明できません。

私の持論ですが、グローバルダイニングの施設を中心に「命令」が発令されたのは、長谷川耕造さん自らが発信していたことに真因があると考えています。

これは決して反抗的な事業者に狙いを定めて報復的に「命令」を発令したという意味ではありません。

これまでの国と東京都とのやりとりや小池都知事の政局運営をみると、庶民から見て判りやすい構図で世論の悪役にされることを最も嫌うのが小池都知事です。

それでなくても7月には都議会議員選挙が控えていますから、都民・事業者と余計なハレーションは起こしたくないはずです。

ところが、今回は長谷川耕造さん自らが積極的に発信して、対象店舗がどこなのか自ずと国民が判る状態を作っていました。

改正特措法45条は5項において「第三項の規定による命令をしたときは、その旨を公表することができる。」と定めています。

ただ、今回の東京都の「命令」では施設名は公表されていません。

何より、公表すれば公表したで見せしめで晒されたとの批判は免れず、同時に事業者側からしても公表されたくないという本音もあると思います。

昨年の感染第一波のときのパチンコ店のように、公表することで逆に人を集めてしまうことを懸念したというのもあるでしょう。

一方で、45条の目的たる「国民の生命及び健康の保護」の見地からすれば、まん延防止のためにしっかりと公表して国民に周知する方が望ましいとも考えられます。

この相対立する要請の狭間で施設名を公表せずに「命令」を発令する必要性と許容性を満たしていたのがグローバルダイニングだったのではないでしょうか。

グローバルダイニングでは長谷川耕造さん自らが最初から公表していたので、行政として国民に周知するまでもありませんでした。

なおかつ、45条の目的には「国民生活及び国民経済の混乱を回避」という規定もありますから、グローバルダイニングの営業姿勢をけん制する必要もあったと思います。

現在では、長谷川耕造さんに賛同し、支持を表明するインフルエンサーも出てきました。

ここら辺は風営法の時間外営業にも似ていますが、規則を守らない事業者がいると、守っている事業者との間に不公平が発生して、結果として社会に混乱が生じます。

一か八かで法令無視して違法営業してもお咎めなしで済むなら、馬鹿正直にやる方がアホらしいというのは事業者の本音として十分理解できます。

そうした不公平感を醸成する業績として、グローバルダイニングの2月の対前年同月比での売上は外食としては驚異的な伸びを叩き出していました。

そりゃ真面目に要請を守っていた周辺店舗の需要を独り占めしてこれだけ売上伸ばせるなら6万円/日なんて惜しくも何ともないでしょうね。

あえて意地悪く深掘りしますが、グローバルダイニングは東証2部上場企業ですから過去の決算は開示されています。

前期はコロナ禍で大変だったのでしょうが、これまでの経営成績を見る限り、そもそもコロナ禍以外の部分で問題を抱えているようにも思えます。

何より3/27には株主総会が控えているのに、法令ガン無視の攻めの経営で上場基準に抵触しちゃいましたなんてシャレになりません。

 

 

時短命令と戦う心構え

 

今回のグローバルダイニングの事例から我々が学ぶべきことはなんでしょうか。

風俗営業許可業種の事業者の皆さんであれば、行政指導・処分において行政裁量で特定の事業者が狙い撃ちされることなんて当たり前のことだと考える方も少なくないと思います。

長谷川耕造さんをはじめ、信念をもって自らを貫いていくにしても、大勢に従うにしても、対行政との対応では行政庁の事情を理解することが大切であるということです。

グローバルダイニングにも、東京都にも、それぞれに守らなければならないものがあります。

ただ、ここで大切なことは相手が行政庁であるということです。

行政庁である限り、政策として実現したい方向性が存在するはずです。

今回は厳しく取り締まろうとしているのか、逆に協力姿勢を引き出したいのかの方向性を見極めるだけでも、間違いなくメリットがあるはずです。

今回の東京都は間違いなく後者の協力体制を引き出したかったケースだったと思います。

また、行政庁と渡り合うのであれば相手の事情を理解するだけでなく、法令を熟知して臨まなければなりません。

上場企業である以上、リーガルチェックは受けて作成しているとは思いますが、はっきり言って長谷川耕造さんの書面からは行政法の知識が足らない人が作成したと思われても仕方のない表現が散見されました。

感情移入して魂がこもっていれば思いは伝わり、相手は動くとの考えが見え隠れしています。

ただ、行政庁は「法律による行政原則」で動いています。

相手を動かすには、まずは相手のルール・土俵で戦うことが大切です。

ルール・土俵とは、法令に定められた手続きであり、手続きに従って戦うということです。

どんなにボロクソ文句を垂れようが、都知事は正当な選挙で選ばれた独任制の執行機関です。

1300万人の東京都民の民意が反映された執行機関の意思として「命令」を発令しているのです。

その執行機関に対して物申すのであれば、リーガルチェックはじめもっと脇を固めて臨まなければなりません。

風俗営業事業者とて全く同じで、警察・公安といった国家権力にまともにぶつかれば必ず負けます。

ただ、国家機関を縛る法令を分析し、法令と言う相手のルール・土俵で渡り合えば突破口が見つかるはずです。

かつての日本海軍連合艦隊司令長官・山本五十六は、軍備で勝る欧米列強との開戦は絶対に避けなければならないと反対していました。

しかし、いざ実戦で指揮をとらざるを得ない立場となるや軍備の劣る日本をいかに勝利に導くかを熟考し、真珠湾奇襲作戦を成功させたと言われます。

いたずらに刺激して眠れる獅子を起こしてしまえば戦況は不利になることは間違いありません。

グローバルダイニングのサイトの企業理念には山本五十六元帥海軍大将の言葉が紹介されていました。

「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」山本五十六

行政庁の担当者に対しても、この心構えで取り組んで参りましょう。

紛争発生後は弁護士ですが、紛争を未然に防ぐ予防法務としてなら是非とも行政書士を活用してください。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています!

それでは、また!

 

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA