風営紳士録2.0

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カジノ誘致場所よりも日本で話題となる依存症議論について

カジノ依存症対策への原案発表

2月15日、政府は「統合型リゾート(IR)実施法」に盛り込むカジノ依存症対策の具体的な内容として示しました。

内容は、本人確認や入場履歴をマイナンバーカードによる個人認証で入場回数を把握し、日本人客や日本国内居住の外国人のカジノ入場回数を週3回、月10回に制限するというものでした。

 

週の規制は2泊3日の国内旅行に対応できること、月の規制は平均3日に1回程度のペースとなり非日常性を維持できることなどを重視したようです。

 

また、統合型リゾート(IR)施設に占めるカジノのゲーミング区域の面積についてはシンガポールのカジノを参考に、1万5千平方メートル以下にするとの考えも示されました。

政府が依存症対策として入場規制の具体策を示すのは初めてで、これには与党自民党内でも賛否両論があるようです。少なくとも、マイナンバーカードの普及率からすると、個人認証の方式はもう少し検討する必要があるのかも知れません。 

 

 15年に渡る攻防

石原東京都知事時代からのカジノ導入議論が15年が経過しています。ちょっと石原東京知事時代のカジノ計画の失敗についての振り返ってみましょう。

 

石原元東京都知事は、税収を増やすためと、観光振興、雇用確保を主な目的として「お台場カジノ構想」を提案しました。しかしながら、現行法ではそれができず、法改正も困難な見通しから2003年に計画を断念しました。

 

カジノ阻止の建前

石原都政時代では、大きく以下の3つの理由でカジノ計画が頓挫しました。

 ①刑法における賭博罪に抵触してしまう

 ②競輪、競馬のように「特別法」にするには法制定が難しい

 ③風営法では遊技場での現金等の提供、提供賞品の買取、遊技球等の店外持出しができない

 

なお、4号営業マージャン、5号営業ゲームセンターでは賞品提供も禁止されていますが、例外として、風俗営業適正化法の解釈運用基準により「クレーン式遊技機についてはおおむね八百円以下のもの」の提供については賞品提供に当らない取り扱いになっています。

 

カジノ阻止の本音?

憶測ですが、石原都政時代のカジノ導入の失敗は警察官僚出身の議員との調整不足が原因だったのかもしれません。

 

警察官僚を応援しているパチンコ業界では、換金が合法なカジノがオープンすれば、おのずと三店方式という曖昧な換金方式をとっているパチンコ店にとって、大きな打撃を受けるかも知れないという危機感を持っていました。

 

 ちなみに石原元東京都知事は、この他にも税収確保のため、都心の一等地にありながら納税をしていなかった銀行に対し「外形標準課税」いわゆる「銀行税」を導入するも、裁判で敗訴したり、未使用の競輪用走路のある東京ドームで「競輪」の復活構想を立ち上げるも、地元文京区の反対で頓挫した経緯もあります。

 

 

アベノミクス成長戦略としてカジノ議論が復活

 

2013年に第2次安倍政権が誕生してから、成長戦略の一環として観光立国としての訪日外国人向けの観光産業として統合型リゾート(IR)が再び注目を集めるようになりました。

 

同じタイミングで風営法の改正も行われ、風営法のダンス規制除外を柱に、深夜営業が可能な「特定遊興飲食店」の新設や旧来の1~8号営業の業種整理も盛り込まれました。

 

 ただし、保護対象施設からの距離制限、時間制限等の詳細は、地域ごとの特性を反映すべく都道府県条例等に委ねられました。この点は民泊法と民泊条例の関係にも似ています。

 

風営法と同様、低迷する日本経済の起爆剤にと、超党派の議員連盟が法案の成立を目指して働きかけを行い、「IR推進法」として成立しました。

 

依存症という錦の御旗

15年超しに成立したIR法ですが、既に成立している推進法というのはあくまで理念や方針などの大枠を規定するものですので、実際にIRの詳細な内容を規定するのは冒頭にご紹介した「IR実施法」によることになります。具体的な依存症対策は「IR実施法」で規定していくことになるため、政府与党内でも様々な議論がなされている模様です。

 

カジノ反対派は、アメリカ・アトランティックシティでのカジノの閉鎖や、韓国・江原道(カンウォンド)における「ギャンブル依存症の蔓延」と地域社会への悪影響を指摘しています。

 

過去には、厚生労働省が「アルコール依存症」をメインテーマとした調査を行ない、その一環として「ギャンブル依存症」の推定値を発表しました。マスコミも「ギャンブル依存の疑い536万人/男性の8.7%が病的賭博の疑い」と報道したこともあります。

 

成人男性の1割弱が本当に病的なギャンブル依存症なのでしょうか?そんな実感は皆さんには無いかと思います。

 

実はその調査方法に問題があったのです。

 

「ここ半年以内」のように期間を限定していないことから現在ギャンブルをやめた人や、人生で数回しかやっていない人でも、ギャンブルをやっているかのような統計になってしまいました。

 

現在「依存症でどれくらいの人が苦しんでいるのか?」を正確に調査すべきでしたが、実際の質問では「今までに、あなたは次のタイプのギャンブルのうち、どれをしたことがありますか?」となっていました。

 

この結果、ギャンブル依存症の疑いのある人が536万人という数字になってしまいました。

昨年は「フェイクニュース」が流行語として話題になりましたが、まさに数字の操作やマジックには疑いを持って考える必要があります。

 

既存の風営事業との違い

 

では、ちょっと違った角度からカジノを考えてみましょう。

 

①日本にはカジノはないのか?ということ

 

実は海外の多くの人達が来日して驚くのは、街の至る所にカジノがあるということだそうです。

 

我々日本人にはルーレットやブラックジャック、バカラ台があるところをカジノと思いがちですが、少額から遊べるスロットマシンも当然カジノの重要なゲームです。

ハンガリーのブダペストのカジノは大半がスロットマシンで、日本のパチンコ店やゲームセンターと似ているそうです。日本のパチンコ店の数は全国に約12,000店ほどあり、外国人の誰もがカジノと思っているようです。

 

②ギャンブルの売上について

上記の報道がなされていた2015年時点での日本国内に於けるパチンコ、競輪、競馬、宝くじ等の売り上げは29兆円でした。それに比較し、世界のカジノ市場規模といえば13兆円程度だったそうです。

 

29兆円の内、20兆円くらいがパチンコの売上だそうで、この現実を考えると日本は既にカジノ大国だったと言って良いのかと思います。そもそも、ギャンブルが「娯楽か?」「賭博か?」というところから考える必要もあるかと思います。

 

カジノを含むギャンブルの胴元の儲け率がどうなっているか、皆さんはご存じですか?

胴元の控除率(儲け率、コミッション、テラ銭)には驚くべき事実があります。誰もが健全と疑うことのない日本の宝くじは、約55%もの控除率になっています。即ち残った44%をくじを買った人達で分け合うという、恐ろしく搾取されたシステムなのです。

 

しかもテレビなどで、10億円という大金が当るという宣伝をし・・・風営法などで言うところの「射幸心」を煽りっぱなしです。

 

ご存じのように、競輪・競馬等の公営ギャンブルは約25%の控除率です。

パチンコは約8~15%と言われています。

宝くじ、公営ギャンブルは先に粗利を取ってしまうので、胴元は絶対損のしない、おいしい商売です。

 

それに比べカジノは?例えばルーレットで赤か黒のどちらかに賭けて当れば2倍に。2分の1の確率です。

1~36の数字に一点賭けすれば当る確率は36分の1、当れば36倍。胴元が損をする確率も同等です。

 

とてもフェアな配当になっています。ただ、ヨーロッパスタイルには「0」という数字が一つ加わり、アメリカンスタイルでは、「0」と「00」という二つの数字が加わるため、ほんの僅かではありますが、胴元の儲けが出てきます。

 

その控除率は、2.63%~5.26%です。バカラの控除率が1.17%~1.36%。クラップスに至っては、0.184%~1.414%という小さな率です。

 

カジノは胴元が払い出しする(負ける)リスクがありますので、宝くじや公営ギャンブルに比べ、カジノは極めて良心的な胴元といえるでしょう。

 

ただし、カジノの場合は、1回あたりのゲームが早いため、顧客が数多く賭をするため、長時間、多数のゲームを行えば、確率論から言って、胴元が儲けられるようにはなっています。

 

このように、控除率を含めた、宝くじや公営ギャンブルについての依存症の危険性に議論にフタをしているのはいかがなものでしょうか。

 

依存症を考える際、射幸心や控除率といった本質的部分にも光をあてて議論する必要があるのかもしれません。その場合、当然カジノだけでなく、その他のギャンブルも検証されるべきでしょう。それでは、また!

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