風営紳士録2.0

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安倍政権下の風俗営業政策を振り返る夏の日

安倍政権下の風俗営業

 

皆さん、こんにちは!

東京都新宿区の風俗営業専門やたべ行政書士事務所です。

安倍晋三内閣総理大臣が辞意を表明しました。

7年8ヵ月もの長きにわたって日本のリーダーとして活躍されてきました。

国民として、まずは心から感謝と労いをお伝えしたいと思います。

本当にお疲れ様でした。

これまでの安倍政権の軌跡を振り返る報道では、第2次安倍政権発足の2012年末から、日経平均株価は1万円以上上昇し、有効求人倍率も1倍を超えるまでに経済を回復させたと伝えています。

実は、風俗営業をはじめ飲食・娯楽サービス産業においても安倍政権の政策によって大きな影響がありました。

象徴的だったのが2016年の風営法改正ですが、この改正では旧風営法3号営業であるダンスクラブなど一部の業態にしか影響がありませんでした。

それより全業種・業態的に影響が大きかったのが、交際費等の損金不算入制度の緩和が行われた2014年の税制改正ではないでしょうか。

特に中小企業では、年800万円までの交際費全額の損金算入が認められるようになったことで法人利用での需要拡大につながりました。

安倍政権が打ち出した3本の矢のひとつである成長戦略の一環として、消費の拡大を通じた経済の拡大化政策として行われた改革でした。

それまでの内部留保・自己資本蓄積を前提とした運用から、ビジネスにおける接待飲食の役割が見直された象徴的出来事だったように思います。

モノ消費からコト消費へとして、体験型消費の価値が見直されたのもちょうどこの頃です。

そして何より、安倍政権が打ち出した観光立国政策では、訪日外国人誘致のため日本の魅力・クールジャパン発信産業として夜の経済・ナイトタイムエコノミーがフォーカスされるようにもなりました。

今でこそ、「夜の街」というと否定的なイメージを持たれてしまうかもしれませんが、2010年代後半からの観光立国政策に絡めた夜の経済振興では現在とは正反対の意味で「夜の街」に光が当てられた時代でもありました。

言うなれば、夜の街・風俗営業にとっての夏の時代だったのかも知れません。

 

 

風俗営業の本音と建前

 

安倍政権の恩恵を受けたというのは何も産業界だけではありません。

我々のような士業、特に資金調達系コンサルタントも大いに恩恵を受けました。

3大補助金なる呼称で知られるものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金などは、旧民主党政権時代には有り得ないような予算が毎年ついたこともあり補助金申請を専門に扱うコンサルタントも多く誕生しました。

その意味では、公的資金関連を扱う士業・コンサルタント安倍政権には感謝しなければなりませんね。

公的資金と言えば、今週気になったニュースがこちら。

 

本ブログでもご紹介した通り性風俗に従事する個人事業主は申請対象になりましたが、法人は対象とならないことから提訴となったようです。

【性風俗従事者に持続化給付金は認められるか】

新宿・歌舞伎町のホスト叩きもそうでしたが、この手のニュースがあると「風俗営業事業者は納税していないから」といった主張を目にすることがあります。

では、仮に風俗営業事業者が納税義務を完璧に果たしていたら本当に公的資金の対象になるでしょうか?

そもそも、国家だって補助金申請時に【税務調査】【社会保険】をチラつかせれば、やましいところがある事業者が申請してこないのは十分理解しています。

それどころか、風俗営業以外の一般の中小企業や小規模事業者にだって節税の名のもとにいい加減な申告をしている事業者が幾らでもいるはずです。

私は、風俗営業に公的資金が投入されないのは、納税状況などとは無関係で、あくまで国民感情の問題、いわゆる世論に従っているものだと思っています。

税金を風俗営業に使われたら嫌だ、これが国民の本音でしょう。

建前としては職業差別は認めていないでしょうが、現実問題として風俗営業事業者には公的資金による補助金はもちろん、融資すらも認められていないのが現状です。

ただ、今回のコロナ禍による災害の場合、特段の事情が認められた司法判断下されるかもしれません。

もっとも、公的資金の風俗営業への投入を全面的に認められるなら、日本政策金融公庫の創業融資を利用して性風俗で開業する時代がやってくるかも知れません。

 

 

白黒つけすぎる功罪

 

風俗営業に対する本音と建前として、もうひとつ気になったニュースがこちら。

角海老グループ関東一円に30店舗を運営するソープランド大手で、都内一等地にビル看板を掲げているので目にしたことがある方も少なくないと思います。

本来、法令上の立て付けとしてはソープランドでの本番行為は認められていませんが、公安だって本当に本番行為が行われていないと思っている訳ではないでしょう。

ただ、もちろん届出時点で本番行為を行わせますと馬鹿正直に申請すれば当然ながら受理されません。

ちなみに、ソープランドなどの性風俗関連特殊営業は「許可」ではなく、「届出」となる理由についてはこちらの記事を参考にしてください。

【ソープランド摘発・性風俗営業はどうして許可ではなく届出なのか?】

 

なお、「ソープランド」という呼称は風営法上の店舗型性風俗特殊営業を指す業種・業態として、警視庁HPでも紹介されていますので、決して違法営業を行う業種・業態への蔑称ではないことにご注意ください。

「ソープランド」の名の由来について、宜しければこちらの記事もご覧ください。

【風俗営業許可店と小池都知事との意外な接点】

 

本音と建前を使い分けていたはずのソープランドに対し、売春場所の提供との容疑で警察が動いたとなると、本音と建前のルール・信頼関係を壊すような何かがあったのだろうか?と勘繰りたくなるものです。

ちなみに、こちらの角海老グループは創業64年の老舗ですが、ソープ嬢にも「確定申告を絶対にさせる」納税意識の高い方だそうです。

脱税絡みでないとすれば何でしょうか?何故このタイミングでなんでしょうか??

半分冗談・半分本気ですが、先にご紹介した性風俗営業事業者の給付金提訴があったことが関係していないのか、と個人的に思っています。

ご紹介した性風俗営業事業者の提訴では訴訟費用を捻出するため、クラウドファンディングなども利用され社会問題としての認知度が高まりつつあります。

なるほど、仰る通り憲法上の法の下の平等・行政契約締結での裁量権逸脱濫用に関してはしっかりと司法判断を求めるべきなのかも知れません。

ただ、公権力に対し本音と建前のルールを超えて筋を通すことを求めるとなると、警察行政に対してだって性風俗産業に対するこれまでのあいまいな裁量は残して見逃してくれとは言えなくなると考えるのが論理的でしょう。

ここが実業家と法律家、現場と理論、本音と建前のバランスの難しさだと思います。

これはパチンコが違法賭博ではないか、という議論でも感じます。

パチンコの適法性判断に関しては最高裁判例はなく、下級審の裁判例が数件あるだけです。

しかも、違法性阻却・処罰阻却などの根拠を明確に示した訳ではありません。というより、わざとそうしているのだと思います。

弁護士、研究者などの学理的解釈と異なり、裁判所をはじめとする公的機関の法解釈は有権解釈と呼ばれ拘束力を伴います。

有権解釈で何事にもきっちりと白黒つけすぎると、何かと生きづらい社会になることにもつながると私は思います。

あくまで私の勝手な邪推ですが、法人の性風俗事業者がコロナ禍による持続化給付金が認められるようになったところで、性風俗でもっとも付加価値を生み出しているキャッシュポイントを潰されては元も子もないのではないでしょうか。

もちろん、コンプライアンスとして法令順守すべきですが、全てに白黒つけすぎると周り廻って自らの首を絞めることになる危険があることは頭の片隅に置いておくべきかと思います。

 

 

泥中の蓮として咲く

 

安倍政権の光と陰で考えると、モリカケ・桜・公文書問題などの反省すべき事件もありました。

ただ、こうした負の側面も含めて考えても、安倍政権は大いに評価すべき政権だったと言えると思います。

経済政策だけにフォーカスされがちですが、昨夜の辞任会見で拉致被害者問題解決に言及したときに涙ぐんだ安倍首相を見て「ああ、やはり8年近くこの人に日本を引っ張ってきてもらって良かった」と感じました。

野党議員の罵詈雑言、アンチアベガーの誹謗中傷にも感情を抑えながら、安倍さんはいつもにこやかに振る舞ってきました。

頭脳明晰な政治家も素晴らしいですが、失敗しても許してもらえて長く続けられるリーダーというのは、こうしたチャーミングな部分をもっている人であって、実はこれが安倍首相の一番の強みだったのではないかと思います。

まずはゆっくり休んで体調を回復させてもらいたいですね。

 

次期政権の首相が誰になるのか分かりませんが、誰になったとしてもコロナ対策を最優先にすることは間違いありません。

「夜の街」対策が緩くなることはないでしょうし、夜の経済・ナイトタイムエコノミーを以前と同様に注力していこうとするリーダーが出ることも期待薄だと思います。

正直、私は風俗営業政策として取締りが強化される方向性になる可能性が高いと思います。

だからこそ、白黒つけすぎない(というと半グレのようですが)本音と建前のバランス感覚が、これからの風俗営業事業者には求められてくるのではないかと思います。

お釈迦様が座る台座である蓮の花は泥水の中に咲くと言われます。

煩悩で汚れた環境に置かれても、自らは染まらずに清く正しく生きることを意味すると言われますが、一方で、実際の蓮の花は泥水でなければあのような美しい花を咲かせることが出来ないとも言われます。

清濁併せもつ風俗営業かもしれませんが、泥水を栄養素として綺麗な花を咲かせましょう。

次期政権で厳しい風俗営業政策が取られたとしても、泥中の蓮を目指して進もうではありませんか。

やたべ行政書士事務所は風俗営業に携わる皆さんをいつでも応援しています

それでは、また!

 

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